第212話、飛べ、飛べ、飛べ
大穴の上にある足場に、ソルラが飛んでいった。こういう時、翼を使って飛べる人材ってありがたいよな……。
「ありましたーっ!」
ソルラが上から手をブンブン振っている。
「あったってさ」
「どうやら、この65階は、魔法陣を乗り継いでゴールまで向かうタイプのようですね」
浮遊魔法を使うには、ちょっと高度があるということなので、レヴィーにリヴァイアサンになってもらって、全員その足場まで移動した。……本当に魔法陣があった。
「これが次の階へ繋がってくれれば、楽なんだけどな」
「邪教教団が、そんな楽させてくれるもんか」
ベルデがにやりとすれば、リチャード・ジョーも肩をすくめた。
「違いない」
少なくとも、ここまできてフロアボスと遭遇なしで次へ行けるとも思えないしな。順当に考えたら、5の倍数だから、ドラゴン系か。
魔法陣を使用。さあて、今度はどこへ飛ぶ?
・ ・ ・
空だった。
とても高い場所から、地面に向かって落っこちている。
「んな、馬鹿なあぁぁーっ!」
魔法陣の先は足場なしって、初見殺しが過ぎるだろーっ!
どこまで落ちたか。猛烈な風になぶられながら、すっとリヴァイアサンがよぎった。彼女が上手く、俺の下に入ってくれたので、手を伸ばして何とかその体を掴むことができた。
「助かった、レヴィー。ありがとう!」
『大丈夫?』
他に、シヤン、リチャード・ジョー、ラエルがいた。ソルラが翼をはためかせ、ティーツァに近寄っている。そうこうしている間に、リヴァイアサンは今度はリルカルムの下へと回り込む。
ソルラがサポートし、何とか全員がリヴァイアサンの背に乗ることができた。全員無事でよかった。
「死ぬかと思ったぜ」
ベルデが唸った。ドルーが周囲を見回す。
「ここは……どこです?」
「魔の塔ダンジョン65階のどこかだろう?」
赤茶けた大地がどこまでも広がっている。俺たちはその上空を飛んでいる。見渡す限り、荒野が地平線の彼方まで広がっている。
「これも誘導の罠だとすれば……どこを見るのが正解だ?」
「まず空から落ちれば、下、大地を見ますよね?」
ジンが上を見上げながら行った。
「我々は落下という形で下へ導かれているわけですから、これまでのパターンでいけば、さらに上が正解では」
「そうだな。下に無事降りられたとしても、普通は地上を捜索するものと考えれば、もっと上か」
レヴィーにお願いして、このまま上昇する。空が青いー。
「綺麗な空ですね」
ソルラが言った。澄み渡る青い空。海のように綺麗な青色だ。ゆっくり眺めていられるほど、のんびりしていられないが。
やがて、俺たちが落ちたと思われる魔法陣が見えてきた。これ、相当高いところから落ちたんだな。もっと上に行けということか。
そこからさらに高度を取る。段々息苦しさを感じてくる。高所は空気が薄いときく。それだけで、かなりの高さだということがわかる。
『見えた』
空に浮いている足場――小さな浮遊島が見えてきた。リヴァイアサンで近づけば。その小島には魔法陣があった。
・ ・ ・
「今度は図書館か?」
視界いっぱいに多数の本と本棚。何とも広い室内に、数千、いやひょっとしたら万はあるのではないかと思える本。
まさに図書館。こんな規模のは中々ないだろう。周囲はとても静かで、魔物の気配はない。
「こういう空気、苦手なのだぞ」
シヤンが顔をしかめた。ベルデが笑う。
「お前、本読まなそうだもんな」
「そういうベルデは読むのか?」
「読めるが、無理に読もうとは思わねえな」
ダンジョン探索中に図書館に飛ばされるとはね……。ま、普通の図書館じゃないんだろうけど。
「誘導罠だとするなら、本を探すのは間違いか?」
「ですね。これだけ本があると、割とやってしまうのが手掛かりがないか、本を探すパターンでしょうから」
ジンが眉間に皺を寄せた。
「となると、本以外のものを探すことになりますが……。何でしょうね」
「図書館は本を読むところ。そこで本を読まない、書棚から動かさないとすれば……一体なんだ? 謎かけか?」
反対を見ろとか、そういう単純なものではないだろう。図書館にきて、することの逆と言えば。
「本を全部燃やしますか?」
ソルラが物騒なことを言った。これには俺もジンも苦笑いである。
「いや、まあ、普通は燃やさないけどさ」
「しかし、本というのは知識の保存。それをなくすのは、保存の逆の意味になりませんか?」
ジンがそう言うと……そうかもしれない。
「本を燃やす?」
「本好きには、たまらなく残酷な行為ですね」
本のない図書館は図書館とも言えない。誘導の真逆を行く行為。
「じゃあ……燃やすか」
リルカルム――と呼ぼうと振り返ったら、すでに彼女は、手に炎の玉を出していた。
「燃やして、いいのよねぇ……?」
うわぁ、彼女の根っこにある破壊衝動全開の笑顔。怖いよ、魔女さん。
とりあえず焼却だが……いくら広い室内とはいえ、やばいよな。換気とか、いや、そもそも退避口作っておかないと、俺たちも炎に巻かれて危ないのでは?
リルカルムは喜んで、手近な本棚に向けてファイアボールの魔法を撃ち込んでいく。絶対コイツ、楽しんでいるわ。
俺たちは距離を取りつつ、安全の確保に務めた。いくら次の魔法陣のためとはいえ、その途中でやられたら意味がないのだ。
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