第144話、まだまだ続くよ、ダンジョンは
ドラゴンとの交戦。レヴィーの身を挺した立ち回りのおかげで全滅は避けられ、見事敵を倒した。
だがその過程で少なからず死傷者が出た。まあ、相手はドラゴンだ。その爪に引っ掛けられただけで、人間なんてあっさり裂かれてしまうからな。
カミリアやシガ、マルダン爺などリーダーは、さすがというべきか特に怪我もなく、くぐり抜けたが――
「アレス様、彼女――レヴィーはいったい……?」
巨大なドラゴン、リヴァイアサンになったのを目の当たりにした冒険者たち。少女だと思っていたら、ドラゴンになるなんて、そりゃ皆聞きたくなるよな。
「言っただろう? 水の神様に仕える巫女だって」
俺はレヴィーの肩に手を置いた。
「水の神リヴァイアサンをその身に宿して、その力を解放して俺たちを助けてくださったんだ。感謝しろよ」
「水の神……」
カミリアが呆然とすると、マルダン爺が自身の髭を撫でた。
「なるほど、リヴァイアサンでしたか。確かに地方によっては、水神として奉られておりますな」
「ドラゴンの姿の神様かぁ」
シガが感心したように言った。
「何にせよ、助かったのは事実だ。ありがとうよ、巫女さんよ」
「ん」
レヴィーが目を伏せた。元々口数は少ないが、わかったという顔をしている。後は、仲間たちに今の話が伝われば、問題は解決かな。
「それより、アレス様は大丈夫ですか? お怪我はございませんか?」
カミリアが心配げな顔になる。一瞬何で、と思ったが……ああ、そうか。
「ポイズンドラゴンの返り血を浴びてね。鎧の塗装がはげた」
体のほうは不死の呪いのおかげで勝手に治っている。戦場などではとてもありがたい呪いだよな、これは。……ただ、死にたい時にどうしても死ねないから、そういう場面では地獄な呪いだけど。
それはそれとして。
「最深部かと思ったが、どう思う?」
「何とも言えねえな」
シガは、辺りを見回した。
「ドラゴンが寄ってたかってお出迎えはいいけど、それだけだもんな。何か仕掛けとか、ここで終わりですって、何かあればいいが」
「探すしかないな」
あるいは次の階への階段なり魔法陣だったりして。
無傷の者たちを使って、周りを捜索――するまでもなく、階突破の魔法陣が見つかった。
「次がある……」
「51階でラスト、という線は?」
笑えない冗談と言いたげなシガに、ルエールはからからと笑う。
「行けばわかるよ」
・ ・ ・
「どう見ても、最深部じゃねーよなぁ!」
シガが吠えた。
夜の闇に包まれた51階。地面から、次から次へとゾンビやスケルトンが湧いてくる。
「アンデッドの巣窟か?」
「ティーツァ!」
「ターンアンデッド!」
聖女ティーツァの神聖魔法が、ゾンビたちをまとめて浄化する。しかし、消しても消しても現れる。
「これはまともに相手せずに、次の階へ行くのが正解か?」
俺が言えば、マルダン爺が頷いた。
「それが賢明でしょうな。しかし、そのためにはまず道を切り開きませんと」
「……だな。リルカルム?」
「まとめて薙ぎ払えって? ワタシを酷使し過ぎじゃないかしら?」
と不満を言いながら、平野を焼き払うようにアンデッドたちを塵も残さず焼却した。……ま、すぐにまた生えてくるだろうけどな。
「神殿らしい建物が見えます!」
ソルラが空に飛び上がって、それを指さした。よし、じゃそいつを目指そう。
俺たち合同パーティーは、アンデッド畑を超えて、神殿のような建物へと突っ込んだ。待ち受けていた上位アンデッドとそれを操るフロアマスター――ネクロマンサーを倒して、51階を突破した。
とりあえず今回は、ここまでだ。
・ ・ ・
王都に戻り、冒険者ギルドへ。待っていたギルドマスター代理のボングに本日の結果を報告した。
「――そうですか。50階で終了説は否定されたわけですな」
「複数のドラゴンに取り囲まれて、全滅するところだったぜ」
シガの言葉に、カミリアもリチャード・ジョーもベガも頷いた。
ジンとラエルら回収屋はダンジョンで回収したモンスターの解体――の前にフロアで、冒険者たちと何やら騒いでいる。
「あれは何です?」
ボングが聞くと、それに答える前に、一同からトテトテと鎧なしのルエールがやってきた。
「アレスー様。宝箱開けるから、来てもらっていいですかー?」
「ああ、49階の……」
200個以上の宝箱。十数個開けたが、全部何かしらの呪いがあったから、呪いを解ける俺がいないと、怖くて開けられないやつ。
「仕方ない。……後の説明は任せていいか?」
「ああ、行ってきて」
シガとマルダン爺が頷いた。さてさて、宝物の呪い解除は数が多くて手間ではあるが、俺としては呪いの補充の機会でもあるから、悪い話ではない。もしかしたら、200個の中に、超絶なお宝があるかもしれないしな。
思えば49階は、呪いだらけ。皆には言わなかったが、内心ちょっとドキドキしていた。
そうやって、呪い解除をやっていたら、城から伝令がやってきた。用件は俺宛てだった。
「隣国絡みでご報告がございます。ヴァルム陛下がお呼びです」
「陛下が」
弟ヴァルムが俺と話をしたいという。隣国絡み……ガンティエ帝国で何かあったのかね。
心当たりがあるとすれば、ヴァンデ王国侵攻の準備をしていた帝国西方軍が、いよいよ攻めてくるってくらいか?
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