第77話、待ち伏せの邪教教団
ダンジョン34階についたら、まさかの邪教教団が襲ってきた。
この魔の塔ダンジョンは、彼らが作ったものとも言われていたから、そういうこともあるのだろうとは思うが……この展開はちょっと想像していなかった。
だが――
「向かってくるなら、返り討ちにするのみだ!」
向かってくる教団戦闘員。まずリルカルムが先制した。
「竜の顎門、業火!」
ドラゴンブレスもかくやの炎が噴き出し、正面の十数名を消し炭に変えた。
左右にばらけた敵を、俺、ソルラ、シヤン、ベルデで迎え撃つ。金属の衝突音が連続する。だが、俺のカースブレードの前では、並の武器ではな!
魔力を乗せた一撃は、戦闘員の剣や鉄棒を両断し、その体を引き裂いた。教団戦闘員と言っても、大して強くはない。
ソルラは敵の攻撃を盾でいなして、剣を突き入れ確実に倒し、ベルデはその素早く小柄な体を活かして、戦闘員の正面をかいくぐると側面や背中を一刺しして仕留める。シヤンは敵の防御をするりと抜けて拳を叩き込んだり、防具も構わず蹴り飛ばしたりしていた。
これなら、襲撃者たちも長くはないだろう。
・ ・ ・
「……まあ、こんなものか」
邪教教団モルファーの暗黒魔術師キートは、アレス・ヴァンデとその仲間たちにやられていく教団戦闘員の背中を見て呟いた。
「では、次の手で行こうか。――我、死者の魂をもって、召喚す! 出でよ、デーモン・ウォリアー!」
その瞬間、地に倒れた戦闘員の死体が震えるように動き出して、その血が魔法陣を描いた。
ねじ曲がった角を持つ悪魔が、死体に代わって姿を現す。身の丈2メートル半はある巨躯の悪魔たちは、アレスたちに襲いかかった。
・ ・ ・
「デーモン!? あいつら、悪魔を呼んだ!?」
リルカルムの声。俺は、召喚された悪魔の兵隊を睨む。
「ずいぶんと懐かしい敵だ」
五十年前。大悪魔討伐の過程で、このデーモン・ウォリアーとは数え切れないほど戦ったものだ。
「ソルラ! 戦うなら武器に聖属性付与。それ以外は効かないぞ」
「私の武器は聖属性です!」
ソルラはホーリーブレードを構える。
「アレス、この敵は……悪魔なのですか!?」
「そうだ。悪魔の兵隊だ。悪魔たちの中では雑魚だが、そこらの武器では傷一つつけられないほどタフだ。後、力が強いから、まともなものを食らったら即死と思え」
「は、はい!」
ソルラ!――ジンが叫んだ。
「聖属性付与をシヤンとベルデにしてやれ!」
その間を援護するとばかりにジンが前進した。一方シヤンは、すでにデーモン・ウォリアーに殴りかかっていたが――
「身体強化を乗せても、吹っ飛ばないとか!」
恐るべき悪魔の耐久力に舌をまく。リルカルムが炎弾の魔法を放つが、デーモン・ウォリアーは炎に一瞬怯んだが、燃え尽きることもなく立っている。
「噂には聞いていたけど、悪魔って厄介ねぇ!」
ラエルが狙撃銃の弾を入れ換えて撃つ。食らったデーモン・ウォリアーは、倒れなかったが猛烈に苦しんでいる。
「何の弾?」
「聖属性弾ですよ」
仲間たちは立て直しつつあるが、俺もここらで敵の注意を引いてやろう。
デーモン・ウォリアーが棍棒を振り上げた。当たれば兜ごと兵士を潰せるほどのパワーがある。だがその前にカースブレードで、その胴を貫く。
生命吸収の呪いが発動。デーモンの体から生命力と魔力を急速吸収。呪われし剣は、悪魔の命すら奪う!
「我が剣の糧となれ。悪魔!」
まず一体。カースブレードよ、今日は喰い放題だぞ!
俺は次のデーモン・ウォリアーに狙いを定めて飛び込む。そうはさせじと、デーモン・ウォリアーも武器を振るう。
だが、遅い遅い。五十年に戦った連中と変わらないじゃないか。
「この程度で、俺を止められると思うなよ!」
・ ・ ・
召喚したデーモン・ウォリアーが次々に、アレスに倒されていく。
暗黒魔術師キートは歯噛みする。
「ぐぬっ……これが、伝説のアレス・ヴァンデということか!」
決して油断したつもりはなかった。五十年前に具現化した大悪魔たちを葬ってきた実力は本物だった。
――しかも、あれだけ呪われていて、なお動けるとは……!
アレスが呪いを抱えているのは、彼がまとうオーラでわかった。それどころか、アレスの持つ剣そのものが、禍々しいほどの呪毒に満ちている。触れれば間違いなく呪われるだろう武器を軽々と扱いこなす。すでに人間を超越しているのではないか。
「しかし、ここで見逃すわけにはいかんのだ……! 貴様はここで仕留める! アレス・ヴァンデ!」
キートは魔法陣を刻む。暗黒魔術師の切り札とも言われる自らの血を使った魔力爆増効果を拡大。
「我、悪魔兵士の魂と贄として、上位の悪魔を召喚する! 出でよ、グレーターデーモン!」
まだ倒されていないデーモン・ウォリアーを犠牲にして、より高位の悪魔を召喚。ウォリアーよりさらに大きく逞しい体を持ち、ドラゴンのような翼を持つ上位悪魔が降臨した。
その腕の一振りは、重装備の兵士をまとめてなぎ倒し、吐き出すブレスは建物を爆砕する。
――間違っても大悪魔には及ばないが、それでも同時に五体の相手は……!
「半月!」
一瞬、光がよぎった。それはアレス・ヴァンデの声。彼の振るいし剣は、五体のグレーターデーモンをほぼ同時に一刀両断にした。
「な、なにぃぃっ!?」
悪魔の血が大量に噴き出した。人の力では簡単に切り裂けない上位悪魔の体が裂けている! キートは驚愕のあまり、目を見開く。
「あり得ないっ! あり得なぃぃっ!」
彼の召喚した悪魔たちは、全滅した。
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