どこまでも不幸な私
【ナツミ1】
私には大好きな幼馴染がいる。
ううん……いた。
今はもういない。
幼馴染で彼氏だったユーくんは自殺してしまった。
私が浮気してしまった所為だ。
でもあれは仕方なかったの。
お母さんが重い病気になって沢山の治療費が必要になったんだけど、ウチじゃとても払えなかった。
こんな大きな金の話、ユーくんにだって相談出来ない。
それで悩んでいた私に、高校の男の先輩が声を掛けて来た。
自分の言う事を聞くなら、お母さんの治療費を工面してあげると言って。
その先輩はお母さんが入院した病院の院長息子さんで、それでお母さんの事を知って私に声を掛けて来たのだろう。
先輩の要求は、私の体を好きにさせろというありきたりなものだった。
私は凄く嫌だったけど、お母さんの事を思って受け入れた。
彼氏のユーくんには悪いと思ったけど、お母さんが治るまで内緒にして我慢すればいいと思ってた。
なのにユーくんにバレてしまって、そのままユーくんが……!
「出て行け!お前に浮気されたからユウジが死んだんだ!!!」
おじさんは私の浮気を知ってたみたいで、凄く怒ってて葬式にも参加させて貰えなかった。
お父さんは他の女の人と浮気して、お母さんを捨てた。
私も連れて行くつもりみたいだったけど、私は怒って断った。
そもそもお母さんが病気になったのは、お父さんの浮気で気を揉んだからなのに!
でもお母さんは、お父さんの浮気と、治療費目当てでした私の浮気、そしてユーくんの死を全部知って心まで病んで、そのまま……
もう私には何も残らなくなっちゃった……
今日はバレンタインで、今年もユーくんにチョコを渡したかったのに……
ごめんね、お母さん、ユーくん。
私もすぐ行くから……
【ナツミ2】
私の家は貧乏だ。
理由は全部あのクソ親父の所為。
稼ぎの大半を浮気相手の女に貢いでいるからだ。
だからウチの家計はお母さんが支えてくれている。
私もバイトをしたけど、中学生のバイトの稼ぎなんて焼け石に水。
精々私のお小遣いになる程度でお母さんに金の無心をしなくなったくらい。
そんな私に、希望が現れた。
幼稚園児の頃、一緒に遊んでた……らしい(お母さん情報)ユウジくんが私と同じ高校に進学して来たのだ。
しかもユウジくんのお母さんは大企業の幹部で、家もお金持ちらしい。
「えっと、ユウジくん。私の事、覚えてるかな?昔一緒に遊んだ川上ナツミだけど……」
私は早速幼馴染という肩書きを盾に、ユウジくんに近付いた。
そして程よく仲良くなった頃に、ユウジくんに告白し、受け入れられて付き合う事になった。
今までサイフ代わりを求めて男をとっかえひっかえして来たから、
ユウジくんは恋愛経験が無いのが丸分かりで、落とすのも容易かった。
ある日、ユウジくんの提案で彼の両親に挨拶しに行く事にした。
付き合って一週目で挨拶とか重くない?とか思ったけど、私としても先の事を考えると必要だと思って承諾した。
「……俺は反対だ。どこの馬の骨とも知れぬ小娘に息子は渡さん」
のに、ユウジくんの父親に交際を反対されてしまった。
は?人に対して馬の骨とか、失礼なんだけど。
「それにこいつ、如何にも浮気しそうな人相をしてるぞ。こんなのと付き合ったらお前が傷付くだけだ」
何で初対面の人にここまで中傷される訳?
浮気なんてする訳ないじゃない。
家がお金持ちで、ユウジくんだって成績優秀で将来有望なんだから、こんな優良物件を逃す真似なんてする訳ないのに。
それにユウジくんの父親は、家事をしながらパソコンで仕事してる人らしいけど、それってつまり自称主夫(笑)のヒモって事でしょ?
なのにどうしてそこまで威張れる訳?
「……いいだろう。遊びで付き合う分にはこれ以上言わん。好きにしろ」
結局は交際を認めて貰ったけど、言い方が癪に触る。
将来ユウジくんと結婚したら、そのジジイは老人ホームにぶち込んでやるって決めた。
クリスマスの時、とうとうお母さんが倒れてしまった。
一人で家を支える過労と、クソ親父の浮気への心労が重なって耐えられなくなったのだろう。
それが原因で高額の治療費が必要な病気まで貰ってしまった。
でも大丈夫。
こんな時の為にユウジくんと付き合ったんだから。
私はユウジくんに、クリスマスデートをドタキャンした事を謝り、その理由としてお母さんの事を話した。
「そんな事が……。分かった、父さんたちに力になって貰えないかお願いしてみるよ!」
話を聞いたユウジくんは、元旦の時にすぐ私を引き連れて彼の両親に治療費の援助をお願いしてくれた。
「ダメだ。他人の治療費を出すつもりはない」
またこのクソジジイに止められてしまった。
「ダメよユウジ。ゲーム機とか買う小遣いとは違うのよ?
仮に治療費を出したとして、川上さんたちはそれを返せるの?その間にあなたたちが別れたりしたらどうするの?
逆に結婚したら帳消しにするの?それってナツミちゃんがウチに身売りする様な事なのよ?」
しかもユウジくんのお母さんまでも援助を渋られた。
「取りあえず、この話はここまでね。次は川上さんのお父さんも呼んで話し合いましょう」
でも結局その場で話は纏まらず、私の両親も呼んで話を纏める事にした。
あくまでも治療費は"貸す"つもりらしい。
でもお義母さん、私、ユウジくんと結婚も考えてますよ?
お言葉通り、息子の嫁の実家に借金の取り立てとか出来ないですよね?
でも次の話し合いの場で、話は決裂してしまった。
「何!?返済して貰うとか、話が違うぞ!」
治療費の返済計画を聞いて、クソ親父が切れたからだ。
本当、つくづく邪魔にしかならないゴミクズなんだから。
それでも諦めない。
私は三学期になると、学校で
「自分の母親が危篤なのに、恋人のユウジくんの家族に助けを求めてもただで金を貸せないからと助けて貰えない」
と友人たちに言いふらしてユウジくんの家族を悪者にして圧を掛けた。
そしでユウジくんへのイジメまで始まった。
これでユウジくんの両親もユウジくんへのイジメを止める為にでもお母さんの治療費を出すはず。
そう思ってたのに。
私たちに治療費を出すのではなく、学校に直接話を付けたのか、私や友達がイジメの罰を受けた。
これはきっと、学校に賄賂を渡したに違いない!
クソ共が!学校に賄賂渡す金があるなら、ウチに寄越しなさいよ!
「こんな日に悪い……とは思わないけど、もう君とは付き合えない」
さらには私がイジメの糸を引いてた事がバレた事で、バレンタインの日にユウジくんからも振られてしまった。
何よ!私の事好きでしょ?ならこれくらい許しなさいよ!
結局私は、別の金持ちの息子を見つけて、彼に取り入ってお母さんの治療費を出して貰う約束をして貰った。
覚えてなさいよ、ユウジとクソジジイにクソババア。
この人と結婚して金持ちの奥さんになったら、復讐してやるんだから。
……なのに、いざ彼の子供を妊娠して結婚まで確実だと思ってたら、手の平を返されて捨てられてしまった。
前に何度か彼の要求でスワッピングプレイをした事があったけど、その時の写真を持ち出し、それを私の浮気現場の写真だと騙り、子供も浮気相手の子供だと捏造して。
ふざけないで!
私だって、スワッピングとかトチ狂った真似を好きでした訳じゃない!
彼に気に入られ続ける為に仕方なくした事なのに!
いや、もしかして、嵌められた?
最初からスワッピングはその為の仕込み?
裁判まで行ったけど私は負け、お母さんの治療費を貰う所か、今まで貰ってた治療費を返し、さらに慰謝料まで出す破目になってしまった。
お父さんはとっくの前に浮気相手と家を出ていなくて、お母さんは私まで浮気したと誤解してさらに気を病み、あっという間に亡くなった。
私はあいつと結婚してお金持ちの奥さんになる事だけ考えてたから、就職する備えが何もなかった。
結局、低学歴の女でも出来る高額のバイトを始め、この仕事を始めた事を後悔し、それでも生活のために抜け出せない惨めな人生を送る事になってしまった。
どうして、どいつもこいつも私を見捨てる訳?
何で私ばっかりこんな惨めな事になるのよ……
――――――――――――――――
コンテスト選考終了&バレンタイン記念!です←
バレンタインに何書きやがったのかはともかく……
バレンタインに合わせて急ぎで書いたので大分雑ですみません
ちょい解説として
1と2でナツミの性格が大きく違う要因としては、
1ではユウジと仲良くしててご飯とかユウジの家に世話になる事も多くて貧乏な家の事情が誤魔化され、父親の浮気にもすぐ気付けなかったのですが
2ではユウジみたいに頼れる相手もいなくて家の貧乏さを肌で感じ、父親の浮気にも早めに気付いて色々厳しい現実に擦れてしまった……と思っています
あとナツミ1がタイムリープする展開とかはありません
息子が幼馴染恋人を寝取られて自殺した。後を追ったら過去に戻ったので今度は死なせない 無尾猫 @aincel291
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