第26話

天視点に戻します。


  _____



 「あ、もう、泣きそうじゃん。ふうちゃん」


私の視線の先には今でも泣きそうな顔を、、、いや、泣いているふうちゃんにハンカチを取り出して涙だを拭いた。



 「だってだって、久しぶりに会うだから」

 「ごめんね。いきなり姿を消しちゃって」

 「本当だよ。心配したんだから」


 「本当にごめんね」



私はそう言いふうちゃんを抱き締めた。



 何でだろう? いつもならこんな風に抱き締めたりしないのに



そこからふうちゃんは涙を流した。



 ***



 「落ち着いた?」


 「うん。落ち着いた」

 「そうなら良かった」



私とふうちゃんは神社の縁側に腰をかけた。



 「私ね。今、バントやっての」

 「知っている」



私の言葉にふうちゃんは知っていると答えてくれた。



 うん。私、ふうちゃんが知っている事を知っているだよね。でも、ここで知っていたら不自然だからふうちゃんに「ウソ」付かないと行けない、、、罪悪感を覚える、、、



 「そうなの?」

 「当たり前じゃん。私は天の一番最初のファンだよ?」


 「ふふ、ファンでもあるけど友達でもあるのよね?」


 「うう、そうだけど」


 「ふふ、私ね。そのバントの曲を日本中に届けたい。いや、バントメンバーに言ってないけど世界中にも届けたのだから、、、」


 「天なら出来るよ」


 「ぇ?」


 「だって、天、今とても楽しそうだったよ。あの時みたいにだから天なら『絶対』に出来るよ」



 「、、、あ、ありがとう」


 「頑張ってね」



私はその言葉に照れてしまい、それを隠すために腕時計の時間を確認した。



 「って、もうこんな時間」


私は慌ててギターを背負いふうちゃんの手を繋いで歩き始めた。



 「え? ちょっと?」

 「ふうちゃん、私、ここでライブするの」


 「え? 本当に?」

 「うん。ふうちゃんには特等席で見て欲しいな」

 「、、うん」


 「わーい。ありがとう」



私はふうちゃんを手を引っ張りながら連れて行った。



ある程度のところまで行くと人通りが多くなっており、そろそろ離れた方が良さそうなところに来た。



 「そろそろ、行くね」

 「そうか。天は人気だもんね」


 「まだまだだよ」

 「ふふ、頑張ってね」


 「うん。頑張るよ」



そう言って私たちは別れた。



 ***



私は少し小走りしながら舞台まで走っている。



 あ、結構ギリギリかも



私はそう考えながら舞台の裏口から入った。



 「セーフ」


 「オーバーしているわよ」

 「天、ライブの時だけいつもギリギリだよね」

 「不思議」


 「あはは、ごめん」




 「はぁ、みんな、円陣くも」


 「ん」

 「分かったわ」

 「おーけ」


私たちは雫石を中心に4人で円陣を組んだ。


「みんな、『Airisu』のライブだよ。今回は夏祭りが舞台だよ。ここにいる夏祭りに来ている人たちに私たちの曲を聴かせよう。さぁ、行くよみんな」


 「了解」

 「うん」

 「ん」


私たちはライブの始まる。ライブの開始位置に待機する。


数秒後、ギターを進み始める。それと共に私たちの曲を始まる。その曲に人が集まり始める。私たちを知っている人がいるようで集まりが増えてきた。



その中にふうちゃんがいて、私はふうちゃんの向かって目を片眼を閉じてウィンクした。



するとふうちゃんは目を見開き、柔らかく笑った。



 楽しんでくれるかな? ふうちゃん



 ***



天と別れた後、私は『Airisu』が行う舞台に歩いた。今回のライブは一切の告知を行ってないサプライズライブになるらしい。



それを私を言って『大丈夫なのか?』と思ったが、天が言ったことから大丈夫だと思う事にした。



私が舞台に近くと音楽が響きわたる。周りの人たちは『何事か?』と思ったのか人が集まり出す。



 「あれ? 『Airisu』じゃねぇ?」「本当だ」「サプライズライブ?」「『Airisu』って?」「これだよ」



あちこちから声が上がる。総合的には好意的な意見が多い。



私はそんな人たちの中から天を見ていた。そこにはとても楽しいそうでキラキラしていて私とはまるで別の世界にいるような気がした。



 私と天はこの時に会ったのにいる場所は全く違う、、、別世界みたいだ。私、天の友達でいいのかな?



そんな風に不安に押しつぶれそうになっていると天がこちらに向かって



 にっこりと笑ってウィンクしてきた。



その光景を見て私を見てくれるという安心感が私を支配した。



その事があったおかげで私は最近じゃ見た事がない柔らかい笑顔をしていた。


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