第4話 クラスのあの子
明智さんと一緒に登校したが、すれ違った友達からはあんまり囃し立てられなかった。
明智さんとは今朝は何食べた、とか、春休みの宿題は大変だったね。とか当たり障りのない会話をして廊下を歩く。
「沢人君。今日はホームルームで自己紹介があるらしいですね」
「そうだよなーなんか緊張するんだよあれ」
教室にはだいたいの生徒が揃っていた。二年生の新学期だからかグループが固まりきっている。昨日は新鮮な気分、てか恋人が出来て翌日だったからな。あんまりクラスメイトとか見てなかったけど、明智さんがいるし、男友達なら健介がいるし。これ以上に友人関係を広げるのもなあ。
「よすー二人ともラブラブっすね。爆発しろ」
健介は俺と明智さんが教室に入ってくるのを見て、駄弁ってた男子の輪の中から手を振った。
「健介。彼女出来た時、散々煽ってきたお前が言うな」
「今はどフリーよ。明智さん、俺に乗り換えてもいいんだぜ?」
「遠慮します!」
「ぐぁ!笑顔でフラれた…しゃーねー、っぱ新しい彼女は新しいクラスで探すか」
健介の恋愛は高校卒業と同時に自然消滅した。健介が彼女さんを大事にしてなかったわけでもない。彼女さんも健介に愛想を尽かしたわけじゃない。別々の高校に進学しただけ。たったそれっぽっちの理由であんなに仲が良かったのに別れていった。もしかしたら俺も高校を卒業して大学生になっている時に、いや最悪、次に学年が変わった時に明智さんから捨てられるかもしれない。
ホームルームが始まった。出席番号順の席なので左前の人から自己PRをしていく。名前と所属部。そしてプラスワンポイント。体育会系な担任の先生が「追加でなんかアピールしろよー!」と声を張る。うわ、出た。面倒な振りだ。出席番号一番は明智さん。なんて言うのかな?
「明智桜です。所属部は園芸部です。えーっとワンポイント?は…」
ん?なんかこっちを見てる。
「そこにいる名倉沢人君とお付き合いしています」
え。明智さんって意外とオープンなの?
当然クラスは大盛り上がり、口笛や拍手が鳴る。
「愛されてんなー!沢人ー!」
まじで恥ずい。俺は地面に突っ伏した。
それからも次々と自己PRが続いていく。そんな中、コミュ力が高い陽キャな生徒はウケを狙ってふざけたりしていた。代表例があいつだ。
「山口健介!部活は陸上やってます!好きなタイプの女子は西沢さんです!」
クラスが爆笑に包まれる。西沢?
俺の後ろの席の子だ。うわ、可愛い。帰国子女って感じの銀髪。
「え、な、名倉沢人です。部活は無所属で、」
ヤバい。美人に気を取られてテンパってる。口が回んない。
「彼女は明智さんだろー!」
誰かが言った。皆が笑う。
俺はあ、はい。そうです。ともうピエロを演じることにした。どうぞネタにしてくれ。
「西沢有栖。部活は英会話部。他は特にないです」
俺の後ろの席の子が立った。なんかいい匂いする。ってか今さらだが西沢有栖って…
学校一番の美少女じゃん!俺は冷水を浴びた気分だった。学年一の美少女の前の席。気づくの遅すぎ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます