もらうぜっ
「もうっ、たまりませんヮアア」
喜びの声を上げるレイカ。
複数の工事現場をはしごして、実家の貧乏侯爵家への仕送りが三倍になったらしい。
サカイ達は今、
”芋洗い坂総合土建会社”の所有する人口の小惑星で、ここで、”
「やはり、”指”が必要ですよ」
サカイは言った。
自分の前にはタイトなスーツ姿のマリア。
「そうねえ」
マリアが答える。
ツルハシやスコップを持つにはいいが、銃などの武装は持てない。
だが、武装を操る指や、武器でねらいをつける
さすがに、”芋洗い坂”はノウハウを持っていない。
「十年単位ですよ」
これらをゼロから開発するにはそれくらいかかる。
「うふふ、だいじょ~ぶ、ま~かせて」
マリアが胸を張った。
豊かな……以下略。
「ちょっと心当たりがあるのよねえ」
「はあ」
「というわけで行ってくるわっ」
◆
屋台だ。
ガタン、ガタン
銀河鉄道の高架下、定期的に鉄道が宇宙に旅立つ。
屋台の提灯には、”ODEN”と書かれていた。
ザザザ、
ま~〇しさに~〇けた~~
いいえ~、世間に負〇た~~
ラジオから流れる、”Old、ショーワ”歌謡。
「ば~ろう、チクショウメ~」
「おやじっ、”バクダン”だっ」
「へいよっ」
屋台のおやじが、白衣を着た男の前にコップを置く。
トクトクトク
”バクダン”とは、戦後物のない時代に作られた闇酒で、お酒というより、エタノールそのものだそうな。
70度くらい。
ちなみにメチルは駄目だぞ、失明するから。
グイッ
白衣の男が一息に飲み干す。
「な~にが左遷だ~」
ヒック
「ちょ~と会社に隠れて、”波動砲”作っただけじゃねえか~」
「お客さん、大変でしたねえ」
オヤジが合の手を入れる。
「あの部長め~」
こぶとった部長のいやらしい笑いが頭に浮かぶ。
――チミ~、とんでもないことをしたね~
――”資材管理部”に左遷だよ~
――グヒヒ、シルフィードの開発は僕が引き継ぐ(もらう)から~
左遷された上に、ほぼ終わっている、”シルフィード”の開発の功績を横どりされたのだ。
「おやじっ、バクダンおかわり」
「それと、スジ肉と大根」
「へいよっ、スジ肉と大根」
皿に移される。
コップにお酒を注いでいると、
「隣、空いているかしら」
金髪眼鏡、ビジネススーツの女性が、白衣の男性の隣に座った。
豊かな胸部装甲である。
「いらっしゃい」
「店主、”カストリ”をお願いできるかしら?」
”カストリ”とは、戦後、闇に出回った劣悪な密造焼酎の総称である。
「はいよっ、”カストリ”一丁」
トクトクトク
女性の前のコップに注がれた。
「大根とちくわをお願い」
「まいどっ」
女性が男性に気安く話しかける。
「まああ、左遷されたんですね~」
ヒック
「”Z2”から”ゼファー”、そして、”シルフィード”と手塩にかけて育てた機体が奪われたんだよ~」
ちなみに北米仕様が、”Z1"。
「ちょ~っと、隠れて波動砲つくっただけなのに~」
「まっ、それは大変ね~」
隠れて会社の資金を使う。
世間ではこれを、”横領”という。
「”大艦巨砲主義”のどこがいけないんだ~」
白衣の男性のポリシーだ。
「そうよ、そうよ、殿方の持ち物は大きい方がいいのよっ」
「うふふふふ」
金髪女性の目があやしく光る。
しばらくした後女性は、出来上がった男性を連れて、安っぽいネオン輝くホテル街へ姿を消した。
「うそっ……❤」
痩せ気味の白衣の男性の持ち物は、正に、”大艦巨砲主義”だった。
この日、芋洗い坂に、”優秀な科学者”と、”入り婿”が入ることになる。
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