はたらくぜっ

 正式に、益荒男ますらおの開発チームに入ったサカイとレイカ。

 今、益荒男ますらおの機種変換訓練も兼ねて、に来ていた。


「か~ちゃんのた~めなら、エ~ンヤコ~ラ、ですヮ~」


 金髪縦巻き、ドゥ・リー・ル、貴族女子語尾(←ですヮ他)は上位宇宙貴族の証し。


 金髪縦巻き、ドゥ・リー・ルのかつらの上からねじり鉢巻きをしたレイカが歌う。

 ガンナー席だ。


 ザク~~


 益荒男ますらおの左手に持ったツルハシが地面に振りおろされた。


「少し下がって下さいまシ」


「ああ」

 ドライバー席のサカイがレバーを操作する。


 キュララ


 足?にキャタピラーを装備した益荒男ますらおが少し下がる。


「嬢ちゃん、シャベルで土を掘り出してくんな~」

 現場監督のだみ声が無線に響く。


「はいですヮ~」 

 益荒男ますらおの背中から収納式のパワーシャベルを展開。

「よっ、はっ、ですノッ」

 器用に両手でレバーを操作して土を堀り出した。 


「……」


「ほらほら、サカイ様、次はパイルバンク(杭い打ち)ですヮヨ」


 キュラキュラキュラ

 益荒男ますらおが移動。


「機体を固定ですノ」

 四方の接地アームで機体を固定。

 キャタピラーが少したわむ。 


 巨大杭打機パイルバンカー用の火器管制装置を起動。

 地面に十字のレティクルが浮かび上がる。

 それに合わせて、左腕の盾が垂直に。


 ガキンッ


 盾裏の巨大杭打機パイルバンカーに打ち込み用の薬包が装填される。


「撃ち込みますわヨ~」

 巨大杭打機パイルバンカーにつけられた赤い警告灯がまわった。


 ズドオオン


 辺りに円状に広がる砂煙。


 ピ――ン

 空薬莢が空中に排出。

 杭打機の本体がヒンジで縦に二つに分かれる。

 丸い杭を地面に残した。


「次弾装填、ですヮ」


 右手が腰アーマーの横についたケースから杭を一本取りだした。

 杭打機に杭を装填。

 杭打機の本体が元に戻る。


「もう少し杭を打ちこんでくれえ」


「了解ですノ」

 レイカが、益荒男ますらおの右手にハンマーを持たせる。

「えいっ」


 ガツン


 杭の頭をハンマーで叩いた。

 

「……レイカさん、……なんでそんなに工事に慣れてるんですか?」

 

「う、うふふ、かけだしの時にちょっと」

 金髪ドウ・リー・ルがふわりと舞う。

 レイカは貧乏侯爵令嬢。

 仕事は選んでいられない。

 ドカチンのバイトも当然経験済みなのだ。


「おおお、嬢ちゃんやるなあ、こっちにももう一本だあ」

 現場監督のだみ声だ。


「はいですヮァ、サカイ様」

「……了解」

 サカイが益荒男ますらおを動かした。

  

「うふふふふふう、契約料の他に工事の日雇い料金もいただけるのですヮッ」

 ――実家の仕送り金額がアップですノオ

 光り輝くようなレイカの満面の笑顔。


「うっ」

 ――か、可愛いかも

 サカイの顔が少し赤い。

 でも、

 

 ――どう考えても戦闘機じゃあないよなあ、益荒男ますらお


 サカイはしみじみと思った。


 しかし、

「宇宙戦闘機かあ」

 サカイは、益荒男ますらおの指先を見た。

 親指と人差し指、そして残りの指は一体化した三本指だ。

「ツルハシやハンマーはふるえても、ライフルとかの武器は持てないよね」


 五本の指とそれを操る制御系プログラム

 それで銃器の狙いをつける火器管制装置。 


 簡単に言うと、”手と銃”が必要だ。


「まあ、この二つは超軍事機密なんだけどね」

「ふうう、たしか、ミツルギインダストリーに一日の長があったはず」

 ――んん、この二つを開発したのが、サクラギ主任だったような

 当然、開発には莫大な予算がかかっている。

「これが無いと宇宙戦闘機じゃあないよなあ」


「サカイ様、サカイ様、お昼ご飯にするのですヮ」

「ん、わかった」

 少し離れた所に益荒男ますらおの母船、戦艦?、”やまとん”が着陸している。

 ”やまとん“の元は、”タコ部屋”と呼ばれる工事現場の前線基地として使えるものだ。

 格納庫の上には、食堂や宿泊施設(せまいっ)、入浴施設も備えている。

 

 キュラキュラキュラ


 サカイとレイカは、”やまとん”に帰り食堂へ移動。

 レイカがアルマイトの弁当箱を開いた。

「いただきますっ、ですヮッ」


「くうっ、白米と梅干ひとつ……のみっ」

 俗にいう日の丸弁当というものだ。

 サカイは、大盛りのから揚げ定食を頼む。

「……レイカさん、から揚げをシェアしよう」

 塔状につまれた唐揚げと大量のキャベツ。

 工事関係者向けに安くて多いのだ。

 その皿をそっとレイカの前に差し出した。


「サ、サカイ様っ」

 ――そ、そんなことされたらっ

 ――そんなことされたらっっ

 ――ほ、惚れてしまいますヮアアア


 この日食堂に、頬を赤く染めて、から揚げのタワーをつつく男女の姿が見受けられたという。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る