ぶあついぜっ
「イノシシ……?」
――大口径のバーニアの加速がすごい。
芋洗い坂が重機をもとに作った
ズドオオン
ガタガタガタ
「ぐっ」
「どう、この加速」
マリアがフットペダルを大きく踏み込んだ。
首を置いていかれそうな加速だ。
ドオオン
「がっ」
「止まるのもすごいのよ」
次は、急激な逆制動。
本体と腰の装甲の前につけられたがバーニアが赤い炎を出した。
前につんのめる。
「えいっ」
今度は横方向のバーニアが火を吹く。
グルン
水平に横に回った。
「げふう」
視界が横に回る。
「ふふふ~~ん」
マリアが鼻歌交じりで機体を飛ばしていた。
「で、イチローは
「ランクは?」
傭兵(マークス)のランクは、”F~S”である。
「Dランクだ」
ズドオオン
急加速と急制動、急旋回の中でなんとか答えた。
一般的にCランクで一人前だから、Dはかけだしの
「ふ~~ん、吐いたりしないでね」
しばらくマリアが
「はい、これに目を通しておいてね」
マリアから分厚い本を手渡される。
「
「あなた、Dランクらしいから私の足を引っ張らないようにしてね」
「あ、ああ、登録したてでな……」
小さく答えた。
マリアには聞こえなかったらしい。
「とりあえず仮契約ね、それと明日の模擬試合はよろしく」
「……わかった」
マリアと別れた。
宿泊している自分の部屋に行く。
――明日までにマニュアルに目を通さなければならないなあ。
ペラペラと分厚い本をめくった。
――あ、開発者にマリアの名前がある。というか、
――射出武器?として使えるのは吸着ワイヤーくらいか。
「
――えっ、あれからさらに速くなるのか?
――むむ、
小型軽量の
――
足は飾りです。
操縦の仕方や仕様、性能などを頭に叩き込んでいった。
◆
翌朝、
相変わらず四角くて大きいなあ。
一応全てのデータを頭に叩き込んである。
――
近くであれやこれやと指示を出しているマリアと
――クスリッ
軽く微笑んだ。
「お~~ほっほっほっ」
いきなり後ろからの大きな声。
――な、なんだ?
「貴方が今回の相手ですヮネエエ」
「うおっ」
金髪縦巻きロール、貴族女子語尾は上位宇宙貴族の証しっ。
「
貧乏侯爵令嬢がそこに立っていた。
口元に扇子。
宇宙は広い。
共和制の国もあれば、民主主義の国。
絶対王政の国もあるのだ。
「え~と、サカイ・イチローです」
「あらっ⤴、サカイ……イチロー……?」
「どこかで聞き覚えのある名前ですヮ」
「はて……?」
「失礼ですが、マークスランクを教えて欲しいのですヮ」
「登録したてで、Dランクです」
「登録したては、Fランクからのはじまりでは……」
二階級も上だ。
貧乏侯爵令嬢が首をかしげる。
「それはですね……」
「なんだお前、Dランクかっ」
振り向くとミツルギの主任のサクラギが立っていた。
ひょろりとした体形。
神経質そうに見える。
「イモアライザカは、Cランク、ふはは、勝ったなあ」
「うちの契約パイロットのレイカはなあ、聞いて驚け」
「Aランクだっ」
サクラギが勝ち誇ったように言う。
「恥ずかしながら……ですヮ」
レイカが奇麗なカーテシーをする。
「というか、レイカも負けたらわかっているな」
「ええ、契約の打ち切りですヮネ」
「そうだ」
「……ああ、打ち切られてしまうと弟や妹たちの学費が……」
彼女の家は貧乏である。
そのため若いうちから、
「イモアライザカを倒すために高い金で契約したんだからなっ」
「そ、そうなんだ……」
よく見ると彼女のパイロットスーツに、継ぎはぎを当ててつくろった跡が見えた。
――苦労してそうだなあ。
「やってみろ、バ~カ、バ~カ」
「短ピー、包ピーー」
「むっきいいい」
いつの間にかやって来たマリアが、サクラギを
マリアとサクラギ、サカイとレイカは、ワイワイと騒ぎながら、機体の置いてある展示ブースに歩いた。
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