第60話
◇◇イーストウッド大陸予選 終結
新人戦を含む 初等学部の試合が終わった夜、王都の彼方此方あちこちの酒場では祝杯の嵐であった。
今年の初等学部が稼いだ点数は近年どころかクーガが始まって以来の高得点と云って良かったのだ!
この点数と余波でカールの名前と3女帝と云う名前が王都中に広まってしまった。
3女帝達にしてみれば今更の事であるのだが、自重と云う言葉を知らないカールは新入生であるにも拘らずフラッグで守護者を務めたのである。 もう新たなヒーローと云えるであろぅ!!!
まぁ~ 今の処はカールと云う名前だけで有り、今年の新人で有る事から実際の人相まではまだ知れ渡って居なかった。
この騒ぎはアーレンハイト家でも同じであった。
「カール! ありがとう 貴方のお陰で初等学部は優勝できたわ」カトリーヌからのお礼に始まり、母達からの称賛と忠告だった。 一番云いたかった自重をしろと云う苦言はもう既に遅かったからだ
「カール 既に遅いけど これからは魔法の行使には十分に注意をしなさい 既に土魔法と風魔法に水魔法は知られています、成るべくこれ以外の魔法は使用しないようにしなさい!」
アグネスはカールにこれから起きると想像される事を話した。 まず、学園内では女性からのアプローチが増えるので注意しなさい。 後、王国内では魔法騎士団からの誘いがあると思うが、カールが学生の内はアグネスが対応するから心配はしなくて良いが将来どうするかはカールが最終的には決める事 他国からの誘いと誘惑があるかもしれないから注意しなさい等。。。
カールに交際宣言をした3人はこの後に正式に3女帝から呼び出しを受け、カールの事を思って居るなら気を付けなさいと少し脅迫めいた忠告を頂いて居た。。。。。
3人はこの時の事を後から振り返り、自分達がカールを選んだタイミングが良かったことをしみじみと実感したと話して居た。
中等学部のクーガが始まった。
初戦のディノス帝国戦はいきなり乱戦の模様を呈した。 これは初等学部の初戦でコーデリア流武術宗家の4女 リシテア・フォン・コーデリアを持ってきた事で、一気に試合の流れを持って行かれた事が原因であったからだ
中等部からは武道系は剣術、槍術、斧術に武術の個人戦と団体戦で行われる事に成る
まだ、基礎が出来ていない初等学部の学生と違い中等部にもなれば、既に基礎は出来ている。
その結果、他校にしてもハイランド王国戦にはとっておきの選手を当てていたのだ、結果としてかなり厳しい結果に終わってしまった。
また、魔法系は火系統、水系統、風系統、土系統に分かれ術の発動速度に規模で競う為に益々、厄介な事に成って居た
この結果、他国からの集中砲火を浴びてハイランド王国は最悪の結果になった。
<中等学部> 男子 女子 フラッグ 合計
・ハイランド王国 16点 1点 17点
・モナード公国 20点 20点 20点 60点
・ホールミア獣人帝国 15点 25点 40点
・ローランド聖王国 16点 20点 36点
・コーラル連邦 20点 7点 27点
・ディノス帝国 26点 30点 56点
当然、突然変異とも云えるカールが居ないハイランド王国の中等学部は各国から狙われる形と成るとこんなもんである。
中等学部の試合が終わり、ハイランド王国陣営は唖然となって居た。 今までこんな点数など有りえなかったのだ、中等学部チームリーダーは何とか陣営の立て直しを図ったのだが全て裏目となった。
高等学部の点数如何によっては初等学部が叩き出した貯金が消えてしまう。
高等学部リーダーはこの事態に生徒会長に指示を仰いだのだ。
生徒会長のカトリーヌにしても、まさかこんな事態に成るとは思わず暫し試案をするしかなかった。
高等学部リーダーとカトリーヌは同級生であり、クラスメイトである事から気安い仲であった。
「なぁ~ 生徒会長さま。。。 カトリーヌさま。。。 頼むよ! 何か知恵は無いのか? このまま下級生が作った100点以上の差をひっくり返されたなんて事に成ってみろ 明日から王都の街を歩けなくなるぞ いゃ~~ マジでヤバぃ!!」
これはカトリーヌも同じであった、カトリーヌは生徒会長で有り、このクーガの総監督。。。代表リーダーであるのだ。
新入生が。。 初等学部が。。。 正確にはカールが作った100点以上の点差を上級生がひっくり返されたなんて事に成れば、学院の歴史史上最悪の汚点になるのだ。
そんな事を考えて居た時、閃いてしまった。。。。 100点以上の点差をカールが作ったのなら、この高等学部の作戦もカールにやらせてしまおう。
カトリーヌは困り果てた、チームリーダーにニッコリ笑い、とんでもない提案をした。
「あのさぁ~ 新入生や初等学部の点数ってね 実を云うと私の弟のカールが作戦を作ったらしいのよ! だったら そのカールに作戦を立てる手伝いをさせれば良いんじゃないかなぁ?」
提案された、高等学部チームリーダーも新入生や初等学部の作戦がカールが全て立てたとは知らなかったので 何とも云えず声を詰まらせていたが カトリーヌの声が次第に頭に沁み込み、心の中に沁み込んできた頃には カールに手伝って貰うのも良いかもしれないと思い出していた。
早速、高等学部の作戦会議室にカールが呼ばれた。
「至急、会議室に来いと云う 事だったのですが、カトリーヌ姉さま 何でしょう?」
「あ~ぁ カール 用事って程でもないのだが、ちょっと相談に乗ってほしくて! 来てもらったんだ」
「はぃ 何でしょう?」
「今日の中等学部の試合結果は聞いているか?」
「はぃ 聞きました ちょっとやばい結果でしたね!」
「そうだ! ちょっとな それで明日から始まる高等学部の試合が中等学部と同じに成ってしまったらシャレにならんだろぅ そこで少し作戦会議を開くことにしたんだ」
「はぃ? 高等学部の作戦会議に何で私が呼ばれたのでしょうか?」
「まず、カール! お前は新人戦と初等学部の作戦を考えたんだろ?」
あ~~ なるほど、カールが考えた作戦が功を奏して新人戦も初等学部の試合は最高の成績を収めた。 だからか。。。。
「カトリーヌ姉さま 分かりました、アイデアは出せると思いますか、僕は新人戦のメンバーと初等学部のメンバーは一緒に練習をしたので誰がどの程度の実力かは分かっていたので作戦も立てれたのですが、高等学部の先輩たちの事が全く分かりません。」
ここからカールは高等学部のチームリーダーに代表選手20人の状態を細かく聞いていった。
全体的に云えば、中等学部のメンバーとさほど変わりがないようだ。。。。
「カトリーヌ姉さま いまお聞きした状態ですと点数的には問題がないのですが、精神的にはかなりやばいです!」
「そんなのは分かっているわ だからカールに何とかして欲しいのよ!」
「う~~ん 勝つためじゃなく、最終的に負けないための作戦しかないと思います」
カールが考え出した作戦は全ての競技で3位を狙うと云うものだった。
普通は勝つために作戦を練るのだが、カールは3位で十分だと考えたのだ その結果 総合優勝を狙うというものだった。
<クーガ途中経過> 新人戦 初等学部 中等学部 合計
・ハイランド王国 110点 65点 17点 192点
・モナード公国 25点 40点 60点 125点
・ホールミア獣人帝国 35点 40点 40点 115点
・ローランド聖王国 5点 25点 36点 66点
・コーラル連邦 10点 19点 27点 56点
・ディノス帝国 40点 37点 56点 133点
確かに各競技で1位を狙うのは大変だが、3位狙いなら考える事は出来るのだ。
武道系ではホールミア獣人帝国が圧倒的に優位である。
また、魔法系ならモナード公国が圧倒的に優位になる。
そして武道系も魔法系も強いディノス帝国を如何に対処するかで決まってしまうのだ。だから3位なのである。 狙うのは各競技で苦手としている所をメインとして攻めるのだ。
ハイランド王国の高等学部代表メンバー一人一人について細かく確認した結果、最適なオーダーと作戦を決めた。
勿論、クーガの花形、フラッグは諦めている。
この作戦を決めた時、作戦会議室には当然の如く生徒会メンバー全員が参加していた。
そして生徒会の執行部と実行部の16人は来年度のクーガ学内予選から全てカールに任せてしまおうと心に誓っていた。
実はカールが新人戦及び初等学部のフラッグで活躍した後、急遽 生徒会メンバーに緊急招集が掛かっていたのだ。 議題は次期、生徒会メンバーにカールを引き入れる事の是非を問うものだったのだが、満場一致で可決され カール本人は知らない内に生徒会メンバーになる事が決まっていた。
これら、生徒会メンバーと高等学部クーガリーダーによる綿密に立案された作戦により、負けないための試合が進められた。 結果として
<高等学部> 男子 女子 フラッグ 合計
・ハイランド王国 10点 16点 26点
・モナード公国 20点 25点 20点 65点
・ホールミア獣人帝国 30点 20点 50点
・ローランド聖王国 3点 20点 23点
・コーラル連邦 10点 2点 12点
・ディノス帝国 35点 25点 60点
<クーガ最終結果> 新人戦 初等学部 中等学部 高等学部 合計
・ハイランド王国 110点 65点 17点 26点 218点
・モナード公国 25点 40点 60点 65点 190点
・ホールミア獣人帝国 35点 40点 40点 50点 165点
・ローランド聖王国 5点 25点 36点 23点 89点
・コーラル連邦 10点 19点 27点 12点 68点
・ディノス帝国 40点 37点 56点 60点 193点
こうして波乱に満ちた、今年のクーガ予選も終わってみると最終得点としては特に異常な点数ではなかった。
高等学部のフラッグが終わった後、各学部の表彰式と最終結果の発表が行われる。
そして全ての試合が終われば後は学生たちの交流の場としてパーティーが開かれる。
ここでも新入生は対象外となってしまうのだ、基本はやはりデビュタントが済んでいることとなる。
後夜祭のパーティーでは各校の男女が気に入った異性にダンスの申し込みをしている。
どうしてもフラッグで活躍した選手は目立つためダンスの申し込みも多くなる
これは初等学部の生徒にしても同じであった。 ただ残念なことに初等学部で守護者として活躍したカールは新入生だということでこのパーティーには参加していないのだが。。。
こうして15日間に及ぶ死闘を繰り広げた各校の代表選手たちはお互いの健闘を祝してこのパーティーを楽しんでいた。
中には既に来年への決意を露わにしている選手もいるのだが、今は戦士の休日を満喫していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます