第58話
◇◇フラッグ4
カール達が第2試合に勝利を挙げた頃に、王家の特別観覧席で起こって居た騒ぎなど全く知るゆえもない、初等学部の生徒達は今年のクーガは物凄い事に成りそうだと騒いでいた。
「カール君 今回も作戦が上手くいったね ありがとう 次も大丈夫?」
「はぃ ブラッドリ先輩 大丈夫です!」
「でも、カール君は凄いな あの耳元で聞こえる魔法には中々慣れないけど、でも便利だ!」
「うん 便利! それに相手選手の居場所も教えてくれるから無駄な戦闘をしなくて良い」
「そうだね この調子で全て連勝しちゃおう!」
「あはははは そんなに上手くは行かないと思うけど、行けたら良いな!」
この時、カール以外は全勝でフラッグを勝てるとは思っても居なかった。
「さぁ~ 先輩 次は3戦目ですよ 頑張りましょう!」
「そうね 早く終わらせてお昼にしたいな~ぁ」
「あははは クローディアは色気より食い気だな~ぁ」
「だってしょうがないじゃない 剣術ってお腹が空くのよ!」
「あ あれれれれ? それって魔法師が良く言ってたよな?」
「いいの! とにかく私はお腹が空いたの」
「カール君 今回もちゃっちゃと片付けちゃお! お願いね!!」
こうして午前の部の最後になる第3試合が始まる、段々と紹介される内容が過激になってきたけど気にしない。
新入生の殆どの女子はカールを応援していた。 だって、新入生なのに先輩に交じりフラッグに出場をしている。 それも守護者としてフラッグを守って居るのである。 新入生のヒーローと云っても良かったのだ
午前最後の試合相手はローランド聖王国である。 騎士の国とも呼ばれていて剣術に特に力を入れているのだ。
開始の合図と共に今回は飛び出さなかった。 「カール君 相手陣営の様子は分かる?」
当然の如く魔法はそれほど得意でもない。カールの魔法で相手陣営の様子が判明した。
「はぃ 相手は剣士2名、武道家2名、魔法師1名の構成です。 攻撃には剣士1名に武道家2名が当たるようです。 守備は魔法師1名に剣士1名で守護者は剣士の人が当たるみたいですね」
カール達ハイランド王国のメンバーはローランド聖王国の魔法師が弱い事を知って居るので、逆に魔法師で攻める事にしたのだ。
「では、手順通りに始めましょうか!」
カールが話しながらも構築している城壁を感心しながら見上げつつ 作戦の確認を済ませていた。
こうして、カールに先導されながら2名の魔導士に剣士1名、武道家1名から成る攻撃陣はお昼は何にしようかと話しながらも敵陣を目指した。
ローランド聖王国の攻撃陣がカールが構築した城壁に到着した。 当然の如く魔法師が居ない為 水を湛えた堀を越えるのは並大抵の事では無い。
武道家は優れた身体の能力を武器に堀を飛び越えようとするのだが10mの堀を飛び越えるなんか無理である、途中で水を湛えた堀の中に撃沈である 相手もそうなる事は充分に承知しているから向こう岸まで泳いで渡るのだが、堀を渡った先には風魔法のウインドウウォールが張り巡らされている。
堀から這い出た所に立ち塞ぐ風魔法により再度、堀に叩き落される。 こんな光景が3度繰り返された所で終了の火球が上がり、試合は終了した。
カールの作った城壁を打ち破るには強力な土魔法で堀を攻略しカールが張り巡らせている風魔法と同等の威力の風魔法が必要と成るのだが、多分学生の操る風魔法では無理かもしれない。。。
そして最後は高さ7mの壁を5つ突き破る必要が有る。 ハイランド王国内で行われた練習で初等学部の先輩達も心が折られていた。
お昼の話をしながら向かったハイランド王国の攻撃陣は敵、魔法師が構築した城壁らしきものを見ながら一気にフラッグを目指した。
始めにサリーの放つ水魔法で敵魔法師が構築しようとした城壁らしきものが崩壊した。 次にカルロスが放つ風魔法により相手の体制を崩した所で剣士と武道家による連携で敵の守護者を撃破した。
最後は初等学部チームリーダーのサリーが敵陣のフラッグを抜いて勝利を挙げたのである。
ハイランド王国チームは学内練習で1回もカールからフラッグを奪えず、かなり落ち込んでいたのだが本番のフラッグでは、この3戦とも何ともアッサリと勝利を挙げて居る。
知らず知らずに色々な作戦を考え、知恵を絞り成長をしていたのだった。
このフラッグ3連勝に一番喜んだのは生徒会長で有り、ハイランド王国チームリーダーのカトリーヌ・フォン・アーレンハイトである。
もし初等学部がフラッグに勝つと総合優勝に近づくのだ。
それも自分が選んだカールの活躍でである。 もう笑いが止まらないとはこの事かもしれない。
カールを含めた初等学部のフラッグメンバーはいつもの食堂へ向かった。既に凄い人で食堂は溢れていたのだが、何とか本日のランチを手に入れた。
「カール! 君には本当に感謝をしているよ 君が守護者をしてくれているお陰で安心して攻めることが出来る あと問題はホールミア獣人帝国と最終試合のモナード公国だな その2か国は今までとは別格だ!」
「確かにそうだね 最悪は練習の時には試さなかった、あの作戦を使った方が良いかもしれないね」
ハイランド王国チームは午前中の3連勝に気分が高揚しているのか、本来 話してはいけない事をいけない場所で話してしまった。
カールは慌てて、風魔法でメンバーの周りを囲い、音声の遮断を図った。
「バーバル先輩 こんな場所で話しちゃ駄目ですよ」カールは軽く注意をしたが、既に少し遅かったようだ。
いまや、ハイランド王国チームは注目の的である。メンバーの周りには無数の人が居たからである。
流石に他国のフラッグのメンバーは居なかったが、他競技の人達は居たのだ。
チームリーダーのサリー・フォン・ブラッドリは深い溜息と共にバーバルを睨んだ事でランベール・フォン・バーバルは自分の迂闊さに気が付いたが、既に遅かった。
「もぉ~ バーバル! 気を付けてよね」
少し凹んだバーバルを見て、同じ剣術のクローディアがクスっと笑った。
バーバルのうっかりさんはいつもの事である。
「さぁ~ お昼を食べて作戦会議をしましょ」サリーの一言で食後の作戦会議が決定してしまった。
食後、ハイランド王国チームに割り当てられている選手控室に集まったメンバーは改めて午後の試合について話し合いを始めた。
「カール君 午後の試合は武力のホールミア獣人帝国と魔法のモナード公国だけど、何か良い案は無いかなぁ~」
「そうですね 多分、ホールミア獣人帝国は今まで通りで大丈夫だと思います。」
「そぉ。。。?」
「はぃ ホールミア獣人帝国では僕が構築する城壁は破れないでしょう」
「だってカール君が作る城壁の堀って10mだよね。 人族じゃ飛び越えられないけど、きっと獣人だと飛び越えちゃうよ!」
「多分そうでしょうね でも、堀を渡った処に風魔法で高さ10mのウインドウォールが張り巡らせています。 その魔法に気が付かないと単純に堀を飛び越えただけだとウインドウォールに捕まり堀の中に叩き落されます、その為の水堀なんですけどね」
「えぇ~ 堀の向こう側って、そんな仕掛けが有ったの? 知らなかったわ」
「だって、先輩達は土魔法で堀を埋めるとか、橋を架けるとかして居なかったでしょ 因みにその内側には高さ7mの土壁が5m間隔で5つ有ります」
「うぁ~ 無理!」
「だよね~~ よし、ホールミア獣人帝国はこのままにしよう 攻撃側はどうする?」
「多分、魔法師は居ないと思うから、魔法師2に剣士と武道家の組合せにする?」
「では、そうしよう クローディアとリンツはお休みね」
こうして、ホールミア獣人帝国用の作戦は順調に出来上がっていった。
「残るのは、最終試合のモナード公国だね もっとも強敵で去年のフラッグ優勝国だし」
モナード公国は強力な魔法を武器に速攻で攻めてくる。
「先輩! ちょっと相談なんですけど。。。」
「なぁに? カールが自分から提案するのは珍しいのだ」
「僕が自陣の城壁を構築した後に先輩達が守護者になって守るのは如何でしょう?」
「カール君は?」
「僕とクローディア先輩でモナード公国へ切り込みます。 多分、モナード公国は強力な魔法障壁を形成していると思いますので僕がその障壁を何とかしている間にクローディア先輩が敵陣のフラッグを奪うって云うのは如何でしょう?」
確かに、カール以外ではモナード公国が張り巡らす魔法障壁は破れないだろう。
もしかすると全員が魔法師かもしれないのである。
もし、相手が風魔法で直接フラッグを奪いに来たら、剣士のランベールが防いでくれるだろうし
「分かったわ! フラッグの守護者は3人で行う事にするから、フラッグの周りは少し広めにしてね」
こうして、少し変則だけど最後だけはカールが攻撃に加わる事に成った。
少しゆったり目の昼食時間も過ぎ、午後の競技が始まる。
全員で第4試合会場に向かった。
エネルギーを十分に充填したアナウンスを担当するサポートメンバー達の力強い声援を受けてカール達の第4試合が始まった。
内容は事前に打ち合わせをした通りの展開になった。 10mの水を湛えた堀を無謀にも飛び越えようとしてウィンドウォールに捕まり、そのまま 水の中に墜落してく獣人たちや、堀の縁でウィンドウォールの高さを図るために石を投げたりしていた。
無理である10mの幅の堀に高さ10mのウィンドウォールである。 この試合もカールが作った城壁を攻略することが出来ずに終了の火球が上がったのだった。
同級生や先輩達はこのホールミア獣人帝国との試合は今までより遥かに攻略するのが難しいと思ってたが、結果は他の試合と時間的にも変わらなかった。
例年だと、4勝した時点で既に優勝は決定してしまうのだが、今年のフラッグは激戦で有り昨年のフラッグ覇者であるモナード公国と優勝を掛けた最終決戦を行う事に成ってしまった。
試合が始まる。 第5試合会場はハイランド王国の生徒とモナード公国の生徒で埋め尽くされていた。
この試合だけはどちらが勝ってもおかしくないのだ
国王が観戦する貴賓席は第1試合会場から第5試合会場まで全てが貴賓室を中心に作られている。この為にわざわざ移動をする必要が無い。 そんな貴賓席では学長のリクールを始め、3女帝達による最後の決戦の予想が語られていた。
「アグネス! どう思う?」マルガレータの言葉に素直に「ダメ~ 分かんないわ?」と返すアグネス
「じゃ~ カール達が勝つためには如何すれば良い?」と聞いてくるマティルダ
アグネスとしても守護者としてのカールの存在が有れば負ける事は無いと思うのだが、相手の守備も堅牢だと思われるのだ 果たしてモナード公国が張り巡らした守護者を打ち破れるのかが分からない。
喧々諤々とした意見の応酬が成される中、第5試合が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます