第54話
◇◇新人戦3
控室の一角で、3女帝と三人の少女たちはカールの事で盛り上がって居た。
「カール! 今更だけどなぁ~ お前の魔法は規格外だぞ! 次回からはもう少し自重をしような」
「バイエル学長 僕の魔法ってどれ位規格外なのでしょう?」
「カールは他の魔法使いが魔法を使う所を見た事は有るな!」
「ん~ 確かに少し発動が遅いような、正確性も無くって 威力も無いですね」
「多分 それが普通だと思うぞ! カールは母のアグネスを基準にしてないか?」
「え~ぇぇぇぇ あ そうかも!」
「カール君 君の母 アグネスはこの学園、始まって以来の天才で王国の魔法騎士団から是非にと誘いがあったのだよ そのアグネス以上の天才が君だ!」
「もう 鮮烈なデビューをしてしまったから 隠せないけど、少しは自重をしてくれると私達 教師は嬉しい!」
こうしてバイエル学長と専任教師のライガールは交互に現状から来る騒動を話し、今後はもう少し自重をするように諭した。
カールは母達の処に向かい、既にやっちまった事に対して素直に頭を下げた。
「お母さま なにやら、とんでもない事をしてしまったようです 申し訳ございません。」
「まぁ~~ カール! 分かってくれたのね もうしちゃった事はしょうがないから 次回からは気を付けてね 今回の事はもうどうしようもないから 私達が何とかするわ!」
マルガレータはカールの謝罪を聞く前からアグネスやマティルダと既に打合せをしていた。
「アグネス様 カール様は何かしたのでしょうか?」
アメリアも魔法と云えば父の魔導師長でキース・フォン・ロードメアが使う魔法を見て育っている為にカールが使った魔法がそれほどとんでもない事とは思っても居なかった。
「アメリアさん 貴女も魔法を使うのよね? 貴女の魔法と比べてカールの魔法は如何?」
「カール様の使う魔法を今日 初めて見ましたけど、私の魔法とは桁違いに違いました。 まるで父の魔法を見ているようでしたわ」
ここまで話してアメリアは ハッとした 新入生のカールがこの国一番の魔法師である父と同じ。。。 確かにこれは異常だった。
「アグネス様 申し訳ございません 理解致しました! 確かにカール様の魔法はとんでもない物です」
アグネスはここでカールを好きに成り交際宣言をしてくれた少女たちに更に付け加えた。
「カールは魔法の才能に於いて私以上の天才です。 更に剣術はマティルダ以上なのです この意味は分かりますね! 実際、私達はこの学院を卒業する時点で各方面の天才と云われました。 ところがカールはまだ、この学院に入学したばかりです 入学したばかりで既に天才と云われだしたのです これから先、どうなるか分かりません ですから貴女たち3人でカールを守りガードをして欲しいのです。」
新入生で魔法と剣術の天才と成れば、将来は安泰である。 他の女性たちがほって置く訳が無いのである カールの事を託された3人は頬を赤らめながらも改めて一致団結してカールを守る事を誓った。
こうして少しの揉め事が有ったのだが、午後の女子の剣術が始まった。
クリスティナは国王や王妃の声援よりカールの母達の声援で今までに無いほど張り切り、集中していた。
クリスティナは初戦のローランド聖王国に対し実力以上の力を発揮し勝利を得た。
この勝利はクリスティナのアドレナリンを刺激し強敵のホールミア獣人帝国やディノス帝国を次々と撃破し優勝を収めた。
<新人戦 剣術女子>
・ハイランド王国 20点
・モナード公国 0点
・ホールミア獣人帝国 5点
・ローランド聖王国 0点
・コーラル連邦 0点
・ディノス帝国 15点
この勝利はただの勝利ではない、3日間の内2日間で剣術男子が同率優勝だったとはいえ最早、完全勝利を収めたと云える。
開催国としての面目もあり、学園全てで応援していたが、この時点で既に新人戦の優勝は決していた為お祭り騒ぎとなって居た。
この時、観客席で観戦していた国王夫妻は周りの御付が引くほど喜んでいたのだ。
後に御付の人々はあの時の国王夫妻は国王としてではなく、一人の親として娘の活躍を素直に喜んでいたのだと周りに話して居た。
クーガでこれ程の圧倒的な優位で優勝を決める事は稀であった。
その優勝を手中に収めた立役者としてクリスティナはお祭りの中心に居た。
この時のクリスティナは王族ではなく、ただの新入生の女の子だった。 この時の経験はクリスティナが過去を振り返った時に良く話す内容だった。
皆に祝福され、代表選手の控室の扉を開くと中にはカールが優しく微笑んでいた。
「クリスティナ! 優勝おめでとう 素晴らしい試合だったよ」カールからの祝福の言葉を聞いた時、クリスティナの心臓は小さく脈打った。
「クリスティナの剣技はとっても力強く、しかも美しかった。 まるで剣舞を見ているようだった。」 もはや周りの喧騒などクリスティナの耳には届いて居なかった。
この時 クリスティナの時は止まり心臓の音だけが時を刻む存在だった。
暫くして「カール様 貴方の教えを忠実に守り優勝をすることが出来ました。 ありがとうございます。」カールに抱き着き、お礼の言葉を云う事だけがクリスティナに出来る全てであった。
控室には国王夫妻も居たのだが、恋する乙女のクリスティナにはカール以外は目に入って居なかったのだ。
これで、残された3日目の魔法女子に武術男子は気楽に試合に臨める。
もしこれが3日目の競技で優勝が決まるとかなると、物凄いプレッシャーなのだが既に優勝が決まって居るのだ。
こうして、クーガの2日目が終わりを遂げた。
新人戦の3日目、最終日である。
この日もカールは試合が始まる前に代表選手を励まして居た。
「前にも話したけど、アメリアの魔法は将来の魔導師そのものだよ 僕の母様にも劣らないと思う だから、緊張をする必要はないよ! 何時も通りに普通にすれば良いからね」
カールは緊張で引き攣ったアメリアの手を握り、目を見ながらユックリと話しかけた。
カールから突然、手を握られた事でアメリアは緊張してた事も忘れ、顔を赤く染めた。 最早、カールの声しかアメリアには届いて居なかった。 気が付くと緊張も解れ、いつものアメリアになって居る事を確認したカールはアメリアに微笑みを浮かべ、一言「大丈夫! 優勝できるから 頑張ってね!!!」
アメリアも後に何故、あんなにスムーズに魔法の発動が出来たのだろうと回顧をして居るほど完璧な魔法を発動する事ができた。
当然、モナード公国とディノス帝国とは激戦で有ったのだが、魔法の発動速度でディノス帝国に勝り、魔法の精度でモナード公国に競り勝ったことでアメリアは僅差で優勝を獲得した。
終わった時は精魂尽きた様にアメリアは座り込んだが、優勝が決した時には喜びの声を出す事は出来た。
漸くしてやっと落ち着き、代表選手控室に戻るとそこにはカールが笑顔で出迎えてくれた。
「アメリア! 僕が思って居た通りやっぱり君は最高だ! 素晴らしい魔法だったよ」
アメリアはカールのその一言で今までの努力が報われた思いがした。
アメリアは確かに才能は有るのだが、その家系ゆえにプレッシャーも計り知れないものがあった。 どうしても、勝って当たり前と捉えられてしまう。
そんな、不安だらけの心をカールはいつも優しく解き解してくれた。
自然とアメリアの目から涙が零れカールに抱き着いて居た。
「カール様 ありがとう」アメリアの心逸話ざる言葉だった。
<新人戦 魔法女子>
・ハイランド王国 20点
・モナード公国 15点
・ホールミア獣人帝国 0点
・ローランド聖王国 0点
・コーラル連邦 5点
・ディノス帝国 0点
いよいよ、新人戦の最後の競技が始まる。 最早、カールが競技者へ贈る言葉は恒例となって居いた。
競技者は何故かカールの言葉を聞くと本当に上手くいくと自己暗示に成るようだ。
いまだ心も体も技も未熟な新入生に声を掛け、落ち着かせる役目は本来、上級生で有りクーガの最高責任者であるカトリーヌが担うべきものだった。
「ルーク! 最早、順位はどうでも良いんだ! 納得が行くように競技を楽しんで欲しいな、そうすれば君も皆と同じ様にきっと素晴らしい動きが出来るよ 君も僕たち同世代の中では最強の一人なのだからね」
静かに語るカールの言葉がルークの心の中に沁み込んでいくと同時に何故だか全て上手くいくと思えてきた。
今年の新人戦の最後の競技が始まる。
ルークは武術家として無我の境地に近い所まで来ていた。 元々、大技を諫め、小さな動きでポイントを稼ぎ得点を得る戦法だっただけに、相手の動きを見定めていく
廻し蹴りから上段、中段への連続技は軸足を支点にして半身を捻って交わしたと同時に相手の首筋へ小さく手刀を当てるだけで勝負は決していた。
一般人には早すぎて何が何だか分からなかったが、まさしく玄人受けする勝負だった。
この試合を見ていた観客。。。 王国や貴族家に所属する騎士団の幹部達は新人戦で見れる次元では無い技だと一目でわかった。
残念な事に優勝こそ逃したものの2位を獲得しその存在感を大いに知らしめた。
<新人戦 武術男子>
・ハイランド王国 15点
・モナード公国 0点
・ホールミア獣人帝国 20点
・ローランド聖王国 0点
・コーラル連邦 0点
・ディノス帝国 5点
こうして全ての競技が終わを告げハイランド王国の優秀さが強く印象づけられた。
<新人戦 >
・ハイランド王国 110点
・モナード公国 25点
・ホールミア獣人帝国 35点
・ローランド聖王国 5点
・コーラル連邦 10点
・ディノス帝国 40点
この日のうちに、新人戦はハイランド王国の圧倒的勝利で終わった事が町中に知れ渡った。
また、明日から初等学部に戻りメンイベントのフラッグが始まる。
この時点では、まだ運営委員会以外にはカールがフラッグに出場する事は知られていなかった。
新入生も初等学部とはいえ、新入生がフラッグに出場した事は無い、これは新入生の実力が初等学部の中でさえ圧倒的に低い所以である。
その圧倒的な開きをものともせず、カールはフラッグへの出場をする事になっていた。
それも控えの選手ではなくメインの選手として、また明日のフラッグで嵐の予感が。。。。。
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