第53話

◇◇新人戦2


全ての準備が終わり、運営委員会は競技の再開をするように指示を出した。


「では 再開を致しま~すぅ 開始!」



カールは開始の合図からひと呼吸後に先程と同じマルチプルのファイアーアローを3つの的に向けて放った。



複数の運営委員たちが監視している前で放たれた魔法はフライングでは無い事が証明されたのだが、その為に余計な注目を浴びる事に成ってしまった。



魔法で重要なのは魔法を構築するスピード、魔法を目的に当てる正確性、そして魔法の威力である。


カールは詠唱もせずに3つの魔法を構築するスピードにその3つを違う的に正確に当てる正確性、更にその的に対し適切な魔力を込め的だけを破壊する威力



魔法の世界での究極な姿を現した事に成る、敢えて言えば、ここに魔法の種類が加わるのだが、一種類だけでも天才的と云えた。



カールは3歳の時の目覚めの儀式で神より受けた七角形の聖紋のお陰で全ての魔法が使えたのだが、それを知るのはアーレンハイト家の3人の女帝だけであった。



今回もカールの的は完全に破壊されてしまっていたが、目視で見てもカールが一番早く魔法の構築を行い 3つの的を攻略した事は衆人環視により明らかだった。



新人戦と云うオマケの中で見せられた、世界最高峰の魔法 各国の魔法関係者や軍関連の騎士達が一斉に色めきだした。 



魔法競技を終えたカールは至って普通の反応をしていたのだが、アーレンハイト家の3人の女帝は昼食の時間にカールに注意を促すために行動を開始した。



<新人戦 魔法男子>

 ・ハイランド王国     20点


 ・モナード公国      10点


 ・ホールミア獣人帝国    0点


 ・ローランド聖王国      0点


 ・コーラル連邦       0点


 ・ディノス帝国        5点




ハイランド王国以外は予想通りの順位で有った。



自分が出場した魔法は既に終わった事としてカールは忘れ切って居た。今は午後に控える午後の女子剣術に付いて考えていた。



「カール様 物凄かったですね 実は私 カール様が魔法を放って居る所は始めてみました。」午後の競技を控えていたクリスティナが声を掛けてきた。



「カール様 今度 私にも魔法を教えて下さいね! でも、流石 アグネス様の息子ね」アメリアもカールの放った魔法が世界最高峰の物だとは気が付いて居なかった。




「クリスティナ ありがとう!  午後からの競技 頑張って! クリスティナは同世代では最高峰だと思うから、優勝が狙えるよ」



「アメリア も明日の魔法の女子 優勝が狙えるよ 僕と一緒に魔法の新人戦優勝を目指そう!」



クリスティナもアメリアも嬉しそうにカールを左右から捉えていた。



そこにもう一人の交際宣言者であるアンネが嬉しそうに駆け寄ってきた。


「カール様 凄かったわね  他の魔法代表者が呻き声を上げていたわよ」アンネは自分が魔法に付いて余り知識が無かった為にカールが如何に凄い技術を持って居たかは理解が出来ていなかった。



こうして、3人の交際宣言者に囲まれる事で結果的にカールは他の喧騒から保護される事に成った。



選手の控室に戻ると、そこには専任教師のライガールに学長のリクール・フォン・バイエルのほかに母達が待ち構えていた。



母達は専任教師のライガールや学長のリクール・フォン・バイエルと話をしていたようだった。



どうやらライガール先生は母達の後輩だったようで 母達に怒られており、学長のリクールが頻りに宥めていた。



「お母さま お久しぶりです!」カールが母達に挨拶をすると一気に母達の機嫌が良くなった。



カールは丁度、一緒についてきていた交際宣言をされた3名をアグネスやマティルダへ紹介をした。



「お母様、マティルダ母様 この度、交際を申込まれたアンネ・フォン・グリューネ様 クリスティナ・フォン・ハイランド様 アメリア・フォン・ロードメア様です」



「アンネ・フォン・グリューネ様 クリスティナ・フォン・ハイランド様 アメリア・フォン・ロードメア様  母のアグネス・フォン・アーレンハイトにマティルダ・フォン・アーレンハイトです。」



3人にとっては突然の出来事であったが、そこは貴族の御令嬢である。 咄嗟に身に着けた礼儀作法は健在である。 見事なカーテシーで挨拶を行った。



「アグネス・フォン・アーレンハイト様、マティルダ・フォン・アーレンハイト様 私はクリーク・フォン・グリューネ伯爵の三女でアンネ・フォン・グリューネでございます。 カール・フォン・アーレンハイト様に正式な交際を申込み、お受け頂きました。 宜しくお願い致します。」



続いて「アグネス・フォン・アーレンハイト様、マティルダ・フォン・アーレンハイト様 私は第四王女のクリスティナ・フォン・ハイランドでございます。 カール・フォン・アーレンハイト様に正式な交際を申込み、お受け頂きました。 宜しくお願い致します。」



最後に「アグネス・フォン・アーレンハイト様、マティルダ・フォン・アーレンハイト様 私はキース・フォン・ロードメア伯爵の長女でアメリア・フォン・ロードメアでございます。 同じくカール・フォン・アーレンハイト様に正式な交際を申込み、お受け頂きました。 宜しくお願い致します。」



こうして、控室が面会の場に成ってしまったのだが 母達の心が一気に将来のお嫁さん候補に移った事でカールを始め、専任教師のライガールや学長のリクール・フォン・バイエルは一先ず心を落ち着かせる事が出来た。



話はカール達がこの控室に来る少し前に遡る。。。。。



新人戦の代表選手は全てSクラスのメンバーで有る事から、担任であるライガールや学長のリクール・フォン・バイエルはこの控室で選手が戻って来るのを待っていたのである。



そこにカールの母達、女帝達はこの控室は何回も使った馴染みの処であった。 勿論、そこにはSクラスの担任や学長のリクール・フォン・バイエルが居る事は分かって居る。 いや その2人に話が有ったのだった。 カールの魔法は特別である。同世代どころか世界最高水準に有ると云える。



その特別なカールに魔法の競技でどの様に対応するのかを教えて居なかった事への抗議のために来たのだった。 それはアグネスやマティルダがまだ、学生だった時に散々 経験した事だったからだ。



アグネスやマティルダは学園に就学する前から天才の名を欲しいままにしていた。


そして、武と知の違いは有るもののマルガレータも同じであったのだ。



その苦労を息子のカールには負わせたくないと母達は考えていたのだが、物の見事に裏切られカールは女帝達以上のデビューを飾ってしまっただった。



実を云うとライガールや学長のリクール・フォン・バイエルの方にも言い分があったのだった。


カールの魔法の適性は入学試験の時に既にハッキリ分かって居たのだが、そこまでカールの魔法が凄いとは想像も出来なかったのだ。



入試では適正しか検査されず、実際のスピード、正確性、威力等の実技面については前期に魔法の基礎を教え後期から本格的に練習が始まるのだ。



それはアグネスやマティルダも通った道だから当然知って居るがクーガの練習でカールの魔法の才に気が付いて当然だと思って居たのだ。



そしてその巨大な才能を如何に隠して標準的な所に落ち着けるかをライガールや学長のリクール・フォン・バイエルに期待をしていたのだ。



実際にはクーガの練習中にカールは1回も魔法を使わなかったのだ、ただ只管に同級生のレベルアップや初等学部の調整にカールの時間は使われていた。



新入生にしてカールは異才とも云える魔法の才が露見してしまったので、今後の対応策を練る必要性にかられた。



マルガレータは序とばかりにカールは剣技や武技も魔法に劣らず才が有る事をライガールや学長のリクール・フォン・バイエルに話した これは事前に知って居る事で発生するトラブルを避ける為であった。



「ライガール先生、リクール学長 改めてお話をしますが カールの魔法は今日見た通りです 魔法の才はアグネスを超えています。 また剣術や武術はマティルダを超えていると思って居ます。」



マルガレータから語られた話の内容は到底、納得できるものでは無かったのだが 実際1時間前にカールの魔法を見た後で有る。



 それに学園でもトップクラスで有り3女帝と謳われた逸材である。 話の信頼性に疑問は挟めなかった。



専任教師のライガールは3女帝が現役である時の後輩である、絶えず厳しい指導を受けてきたために自然と教師と成った今でも3女帝には頭が上がらない。



また、学長のリクール・フォン・バイエルにしても3女帝のお陰で10年近く大陸におけるトップを維持し覇権を得ていたのである、多少の無理は聞いてきていた。



まして、女性とは過去の事も全て覚えて居るものである、自分が忘れたい暗黒史などお構いなしに掘り下げ、更にカールの事を絡めてネチネチと理論的に話されていたのだ。



そんなカールの事でグチグチと云われていた所にカール本人が交際相手を連れて入ってきたのである。



ホッとしない訳はない。



そして3女帝の関心が3人の少女たちに移った事で、心底 生き返った心持に成ったライガールと学長のリクールは事の成り行きを見守った。



「マルガレータ様にはお屋敷を訪ね、正式にご挨拶を致しましたが、アグネス様にマティルダ様へのご挨拶はクーガが終了した後に訪ねる予定を確認する心算でおりましたが、宜しいでしょうか?」



アンネはここぞとばかりに二人の予定を確認していた。 本来なら 事前に手紙を出して、二人の予定を確認するのだがクーガへの準備や予選で忙しくそこまで手が回らなかったのだ。



結果としてクーガの終了後に手紙を出し、実際に訪れるのは冬の休み頃になると思って居た。



アグネスやマティルダにしても過去に同じような事を経験した身である。 彼女たちの心情は十二分に分かって居た。



笑顔で微笑み「アンネ・フォン・グリューネ様 クリスティナ・フォン・ハイランド様 アメリア・フォン・ロードメア様 と云ったかしら 貴女たちの準備が整ったならいつでもいらっしゃい! 歓迎をするわ」アグネスは過去の自分の事を思い出しながら訪問の許可を出した。



こうして、カールの交際相手は正式にアグネスやマティルダの元を訪れる事が決まったのだ。



この間 カールは完全に蚊帳の外。。。 まぁ いつの世も男性の扱いとしてはそんなものであるのだが。。。


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