第27話 防犯設備
「ホッ! ホッ! ホッ! ホッ!」
「フウ……フウ……」
「ホッ! ホッ! ホッ! ホッ!」
「フウ……フウ……」
「ホッ! ホッ! ホッ! ホッ!」
「フウ……フウ……」
「天地さん! あと、ちょっとですよ!」
「フウ……フウ……」
俺と御手洗さんは、朝のジョギング中だ。
基礎体力がアップすれば、戦闘力がアップするとの情報に基づき、俺と御手洗さんは、基礎体力向上作戦を実施中だ。
ダンジョンに入れば、ステータスやスキルの恩恵にあやかれる。
基礎体力などダンジョン内の戦闘に関係ないと思っていたが、そうでもないらしい。
基礎体力が底上げされると、ステータスで向上する値が大きくなる――という説がある。
真偽のほどはわからないが、俺と御手洗さんは初心者で、沢本さん一人に負担をかけがちだ。
ならば、『ちょっとでも効果がありそうなことは試してみよう!』と……張り切ってみたが、ストレッチをやれば体が固い、ジョギングすれば息が切れる。
現在、先行する御手洗さんに、俺は必死で食らいついているのだ。
非常に情けない。
だが、素晴らしい発見があった!
ジョギングをすると、御手洗さんの揺れるお尻を堪能できることだ。
――女性の魅力とは、お尻ではないか?
今日、俺は新たな扉を開いてしまった。
また、一歩成長してしまった。
「ダーッシュ!」
祖母の家が見えてきたところで、御手洗さんがダッシュを始めた。
俺も必死で御手洗さんについていく。
ゼーハーゼーハー言いながらも、何とか祖母の家に戻ってこれた。
「あの……御手洗さん……シャワー……お先に……どうぞ……」
息も絶え絶えだが、シャワーは女性に譲る。
俺はジェントルマンなのだ。
「ありがとうございます。じゃあ、先にシャワーをお借りしますね」
のぞきには行かないぞ!
「おはようございます。ちょっと、よろしいですか?」
うちの鉱山ダンジョンを警備しているガードマンさんが声を掛けてきた。
「ゼエ……ゼエ……。おはようございます。何でしょう?」
「昨日の夜も黒い車が来たんですよ」
ガードマンさんは、眉根を寄せて気味が悪そうにした。
ガードマンさんの話によると、黒い車はちょっと離れた場所に長時間止まっていたそうだ。
ガードマンさんが、声を掛けようと近づいたら急発進したらしい。
「先日の黒い車と同じですか?」
「ええ。たぶん、同じだと思いますよ」
不気味だな。
ウチは女性が多いし、俺たちがダンジョンに入っている間は、祖母一人だ。
もう、ちょっと防犯を強化しよう。
*
防犯について、ダンジョン省の片山さんに相談したら、警察のパトロールをしてもらえることになった。
パトカーが家の前を通るだけでも、犯罪の抑止になるだろう。
今日の午前中は、鉱山ダンジョンへの入場を遅らせて、俺、片山さん、工事会社の人と三人で、防犯設備の打ち合わせを行っている。
工事会社の人から、防犯カメラの設置と祖母の家の一部屋を避難部屋に改装することを勧められた。
防犯カメラは、三箇所に設置する。
ダンジョンの入り口、玄関、駐車場を見渡せる位置だ。
そして『防犯カメラ作動中!』と書かれたステッカーを表札や玄関の目立つ位置に貼ってもらう。
防犯カメラは、設置して良いと思う。
よくわらかないのは、避難部屋だ。
「片山さん。この避難部屋は、必要なのでしょうか?」
「絶対ではないですが、ダンジョンの近くにお住まいならあった方が安心ですね。ダンジョンの魔物が、ダンジョンの外へ出たケースがありますから」
「うーん、なるほど」
避難部屋は家の一部屋を頑丈に改造する。
避難部屋の中から扉をロックしたら、外から扉を開けられなくするのだ。
避難部屋の中には、水、食料、非常用のトイレ、警察への通報ボタンが設置する。
万一ダンジョンから魔物が出てきても、数日籠城することが可能だ。
良い設備だけれど、また、お金がかかる。
防犯カメラと避難部屋をあわせて、三百万円だ。
これでも国や市の補助が入って、大分安くなっているそうだが。
祖母に相談したが、判断を丸投げされてしまった。
俺は悩んだが、家族の安全を優先することにした。
黒い車の件もあるし、ダンジョンが一般向けにオープンすれば、人の出入りが増えるのだ。
オープン前にしっかり工事をしておけば、ダンジョンに安心して入れる。
俺は工事会社の人に、工事をお願いすることにした。
「防犯カメラと避難部屋の工事をお願いします」
「承りました」
*
ダンジョンへ入る支度を整えて外へ出ると、駐車場で沢本さんと御手洗さんが組み手をしていた。
沢本さんが細身の剣で御手洗さんを攻撃し、御手洗さんが扇子で剣を弾く。
なるほど!
身を守るための技術か!
後衛の御手洗さんは、前へ出て魔物と戦うことはない。
だが、前衛の沢本さんが突破され、魔物と対峙することもあり得る。
いざという時に、備えているんだな!
組み手をすると、お二方の胸やお尻が揺れて、まぶしいぜ!
「沢本さん! 御手洗さん! お待たせしました!」
「おー! 早かったな! じゃあ、行くか!」
「行きましょう!」
俺たち三人は、鉱山ダンジョンへ入場した。
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