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 お腹がいっぱいになったら、少しだけ目を瞑る。


 そうすると、空気の音が聴こえる。


 まぶたの裏には怖さもある。


 だけど、緑の香りは心を穏やかにした。



「国境はね」


 ジャックはスピカを見る。


「国境自体が観光地になるくらい、きれいなの。ガラスで出来ているのよ。夜はランタンの灯りで照らされて、言葉に出来ないくらい綺麗だし、昼間は太陽を映して、いろんな色に光るの。虹みたいにね」


「ふーん……それで向こうの景色があんな風な色なんだ」


 草原の向こうの虹を見つめる。


「色の技術はバランじいが、造ったのはハッティワークスよ」


「だと思った」


「ふふ」


 友人ジェイクの誇らしげな顔が浮かんで笑みがこぼれてしまう。


 国境づくりに携わっていても、いなくても、きっとそうだと思う。

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