虹の国境と幸運の鳥

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 空のもやがやっと晴れてきた頃、太陽は空の真上からジャックとスピカを細く、照らし始めた。


 幾筋もの光の糸が絹のように降りて来て、だんだんと青空が広がって行く。


「気持ちのいいお昼ね」


 二人は草原でお弁当を食べた。

 ふわふわのパンに、たっぷりのスモークチキンが挟まったサンドイッチと水筒にスープ。


 穏やかな風が吹き抜ける。


 届きそうなくらいの青い空を見上げると、怖いことなんて何もないように思えた。


 草が揺れる音。

 遠く、カモミールの花が咲いている。

 可愛らしい白たちが風に揺れている。



「地平線に虹が見える」


 ジャックは風の匂いを。


 スピカは空を見上げていた。



「国境よ。シリウスとブランカの。ブランカもいい国よ」


 スピカは銀色の笛をぎゅっと握った。

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