「朝ご飯、食べてってね」

　マーサは付けていたエプロンを器用にくるくると纏（まと）めた。

　そして、ふんわりとジャックの前で屈（かが）む。

「無茶はしないでね、絶対に。……約束して」

　ジャックはマーサの顔を見つめた。

　お母さんがいたら、こんなふうかもしれないと思う。

「約束します」

「よしっ」

　マーサはすっと立ち上がった。

「じゃあ行くわね。あ、ジャックちゃん。少しくらいの怪我だったら、また私が治してあげる。私に任せて大丈夫よ。じゃあまた」

「はい、また」

　マーサが部屋を出ていくと、檸檬（れもん）色の光だけが残った。

　それは優しい朝日みたいに、部屋の中を暖かくした。

　そして、毛布のしゃぼんの匂い。

　下の階から、ステーキの匂いがする。おいしそうなスープの匂いも。

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