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 キッチンライトをパチンと消して、空色のテーブルランタンを点けた。


 透き通る光の中、ジャックとバランじいは向かい合って座る。


「いただきます」


 ジャックは白湯を一口飲み、それから人参にんじんサラダを一口。

 バランじいは、白湯を持ったまま、窓を見ている。


「どうしたの?」

「わしは、何もできん」


「へ?」


「わしは、何もできん。お前さんは、明日旅立つ。国のために。しかしわしは……」


 ジャックは、新聞に目を移した。

 今朝の新聞は、いつもより薄いけれど、国の状況がしっかり書いてあった。


 たくさんの人が、それぞれのことを頑張っている暮らし。新聞もきっと、少ない灯りと少ない人員で、頑張って作ったのだと思った。


 ふぅ、と白湯を吹くと、白い湯気が雲みたいに昇った。

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