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「ねぇバランじい」


 テーブルランタンの青い灯りは、小さな空のようだとジャックは思った。


「みんな、なんで頑張っているのかな」


「……どういうことじゃ」


「僕さ、この国に事件が起こって、みんなが、スピカが、頑張っていて……でもいろんな人に聞かれたんだ。君は見捨てることもできるのにどうしてって」


 ジャックの問いに応えられない。

 バランじいは、それも自分の所為せいのような気がした。


 ずっと、心が重かった。

 シリウスの、晴れない朝のような自分の心。


 でも、目の前のふわふわの黒猫子どもの、金色の瞳はそれを打ち消すように、ささやかな空の光の中で、強く輝いている。


 ジャックは何かを、懸命に何かを探しているようだった。

 心の奥の大切な何かを、懸命に。

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