闇に寄り添う、リミットと王様の決定

135

 薄暗いトンネルを、手を繋いで進んだ。


 長い、長い静かなトンネル。


 何が起こるのか分からない不安に、息を潜めて辛うじて進んで行く。



 一人ではない。



 その想いが、足を進ませる。


 冷たい階段を、一歩ずつ登って行く。


 沢山の人の気配。



 扉をくぐり、薄暗い深海のような青の中に、兵士や、給仕の女性や、沢山の人々が慌ただしく走り回っていた。


 ここは本当にシリウスの城なのか……。


 暖かい光に満ちた空気は、思い出の中にしかなかった。


 スピカは仮設の檀上に、父の姿を見つけた。


 衝動に駆られる気持ちを抑えて、ジャックの前足を握る。


 握り返された温かさに、深海の中に揺れる金色の瞳を見つめた。


 大きく息を吸った。


「……ジャック、避難者はあそこに並ぶみたい。行きましょ!」

 

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