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 塔の一階ロビーには、沢山の人が集まっていた。


 講演台の上の兵士が、スピーカーで懸命に、呼びかけている。


「皆さん、大丈夫です。私は水蒸気の谷地区警備隊責任者です。緊急事態の鐘が鳴っていますが、この塔は安全です。真ん中に固まって、情報を待ちましょう」


「ジャック、この塔はとんでもなく頑丈に出来ているのよ」


 真ん中に固まって、手を繋ぐ。


 不安に、心が埋め尽くされないように。


 他の兵士が入ってきて、隊長に耳打ちをした。


「皆さん、情報が届きました。谷の一部が陥没し、いつも以上の蒸気が噴き出している模様です。この塔は安全ですが、広がりがどこまでに及ぶのかが予想できない状況にあります。皆さんは地下通路を通り、城へ避難をお願いします」

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