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 蒸気の圧倒的な勢いに気を取られていたジャックは、スピカの反応が全くないことに気づいた。


 薄暗い展望室の中でともり始めたランタンが、スピカの表情を照らしていた。


「……スピカ?」


 真剣な顔をしたスピカは、昇りゆく水蒸気から目を離さずに言った。



「なにか、おかしい……」



 カーン!!!!!!!


 カーン!カーン!カーン!……――!!!



 けたたましい金属音。



 逆立つ毛を必死で落ち着かせ、ジャックは周囲を警戒した。


 蒸気のうねりは、黒い炎が天空に燃え広がるように、勢いが止まない。


 圧倒的な闇の訪れ、鳴りやまない金属音に、恐怖し、目が離せなかった。



 何かが起こっていた。



「スピカ、ジャック君、落ち着いて下に降りよう」


 手を繋ぐ。


 そうすると、息が出来る気がした。

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