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「ジャック、ここからの眺めは私も好きよ。あ、ほら、もうすぐ水蒸気が上がるわ。あっちの方角よ」


 スピカの差す方角を見つめる。


 なんだろう、目の前に少しもやがかかってきたような、不思議な感覚に包まれる。


「向こうにもやが……。――!?」


 もやの彼方に蒸気の爆発が起こる。


 白いうねりが勢い良く天に上り、遠い空の向こう、ぐんぐん広がる。


 巨大なうねりは瞬きする間もなく、白と、やがてグレーが混ざりながら青空を変えていく。



 ――夜になる。



 予感が跳ね上がり、ジャックは息をするもの忘れていた。


「凄い……」


 見る間に太陽が陰り、グレーが闇に変わって行く。



 圧倒的な、夜の始まり……。 



 展望室の星色のランタンがともり、15時の小鳥の時計がチ、チ、チ……と鳴いた。

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