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「人の力……国の力を感じるんです。この国のランタンを見てるとね」


「そうですね」


 ジャックは広場に浮かぶガラスの象の気球の姿を見つめた。



 出会ったことがないものと、心を繋ぐ力が、人にはある。



「さて、そろそろ娘のところに行かなければ」


 僕も、そろそろ湖に行く時間だ。



 ジャックは広場の銀時計を見つめた。

 青い光の中で銀色に輝く秒針が、友だちの笑顔に重なる。


「ダンカンさん、いい夜を」


「ジャックさんも。おっと」


 沢山の荷物を一つもこぼさないように、ダンカンさんはひとつひとつの荷物を大切そうに抱えた。


 林檎りんごの香りが、まだ辺りに残る。


 ともしびの、優しい夜。


「それじゃまた」


「ええ」


 ジャックもきらきらのこんぺいとうが入った袋をぎゅっと握りしめた。

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