104

「そうだね」


 バランはきっと叱られるだろう。

 いつもと同じに。


 いつもの風景を思うと、少し心が温かくなった。


 それでもこんな祭りの夜は、心が華やいで、楽しさに委ねたくなる。


 きっと許してもらえるだろうと思っていたら、スピカが言った。



「まぁ、お祭りだものね」



 パレードの波は終わったけれど、世界は綺麗だった。


 人々が吊るすランタンの光。


 ロウソクの残り火のような、儚く美しい光。



「ジャック、もし大丈夫だったら、一時間後くらいに、湖に行かない?祭りの夜は、ちょっと素敵なのよ」


「いいよ」


 どこかで、弦が弾かれるような心地よいメロディーが聴こえた。

 鈴の音。風の音色。


「良かった。それじゃ、後でね」


 くるりと向きを変えたスピカの姿に、ジャックは手を振った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る