98

 心地よい夜風の中にハミングが重なる。


 ジャックの金色の瞳と、スピカの青い瞳が、生垣の向こうのあちこちの光を宿して、ピカピカにきらめく。


 ピヒュフーイ、ピピピュヒューイ――……


 林檎りんごの花の形の街灯の下で、雲雀ひばりさえずった。


 白い灯りの中で、三重奏が響く。


「ねぇジャック。今日みたいな綺麗な夜が、この先きっといくつもあると思うの」


「え?」


「私ね。この国は自慢だわ。だけど、苦しい歴史もあった。この先もいいことばかりではないと思う。私自身にも。ジャックも、そうでしょ?」


 ジャックは光を見た。


 星空の海のような輝く光の流れ。青い波。

 楽し気に、はしゃいでいる子どもたちの声。


「……うん」


「でも、またきっとある。私たちが望みさえすればね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る