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「……ク……――ジャック!!!」


 彗星のような速さで、向こうから小さな妖精が駆けてくるのが見えた。


 青い瞳の小さな小人の少女。


「ジャック!まだ町にいたのね、会えてよかった」


「これ!スピちゃん、衣装のまま戻ってきてはだめじゃないか……」


「はっ!」


 息を切らせたスピカは、リネンのキュロットの上に着けた妖精のスカートをぺりぺりと素早く引きがした。


「これでいつものスピカよ。ジョンさん」


「ふーむ、まぁ、いいだろう」


「ジャック、こっちよ」


「スピカ!」


 スピカを追いかけると、小さな空き地に着いた。

 一本のりんごの木が植えられた、可愛らしい空き地。

 手押し車やいくつかのペンキ。


 白い、りんごの花の形の街灯がぽつんと、優しく照らしていた。

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