ジャックと祭りと美しい星々の海

75

「バランじい、バランじい!いないのかい?」


 ジェイクは、薄暗い、けれども柔らかな空気をまとう薄暗い狭い店内を慎重に進んだ。

 魂が宿る絵画のような灯りの重なりの中を進むと、どこか懐かしいような、優しい気持ちが思い起こされる。


 けれど、吹けば飛ぶような細工のランタンにひやひやしながら進むけれど、ジェイクの大きな鍛冶道具はまんまと一角のランタンたちを崩してしまった。


「あぁもう!」


 連なって崩れ落ちる美しい世界はなんて脆い。


 急いで直すけれど、もとの柔らかい空気にはならなかった。


「ディスプレイが狭すぎるんだよ、もうー……」


「あっ大丈夫ですよ。すみません狭くって。あっ!」


 見上げると金色の瞳。


 いつかの日、広場で出会った黒い旅人がそこに居た。





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