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「そういえば……」


 スピカはため息をついた。


「お父さん、わたしこの間、湖でランタンを壊してしまったの。ふたがパカパカしてるから、危険かもしれないわ」


「ほぅ。大丈夫だったかい?」


「大丈夫よ。でも、ふたが勝手に開いてしまったり、石が飛び出たりしてしまうの……」


「私はなかみのことしかわからないし……ごめんね、スピカ」


「ジニア、大丈夫よ。そうだ!ハッティーワークスに行ってみる。他のところで買ったものだけど、ジェイクなら直してくれると思うわ!」


 スピカはランタンを高く掲げた。


「気に入ってるもの。直してもらうわ」


 青い廊下で、碧いランタンが日差しを浴びている。


 取っ手のところの蜂蜜はちみつ色の星が、復活を待っているようにキラ、キラリと光っていた。

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