64

「ジニアさん、今朝もスピカと遊んでくれてありがとう」


「お父さん!おはようございます」


 スピカは廊下の奥から現れた小人の紳士の膝に巻き付いた。


「スピカ、青い廊下は走ってはいけないよ」


「もちろん、わかってるわ」


「いい子だ」


 三人は太陽が差し込む青い廊下を並んで歩いた。


「ジニアさん、研究は順調ですか?」


 紳士が聞いた。


「はい、今にもっと少ない量で、もっと長く、強く光る石を誕生させてみせますわ」


「頼もしいですね」


 ジニアは微笑んだ。


「ところでスピカ。今日の仕事は順調かね?」


「順調よ、お父さん。みんなに郵便を届けたし、学校が終わったらパトロールにも行くわ」


「いい子だ」


 手のひらの暖かさ。


 スピカは誇らしい気持ちで父の目を見つめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る