スピカとかけっこと笛

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 蜂蜜はちみつ色の、星のマークが青の中で揺れている。


 グレーの壁に囲まれた、トンネルのような長い廊下。


 その廊下はあまりに長くて、先が見えない闇の廊下。


 少女はマシュマロをひとつ、取り出した。


 湖で会った、猫の少年ジャックを思い出す。



「毎日じゃなければ大丈夫」



 口の中に、ふわふわの甘さが広がっていく。



 少女は元気よく廊下を駆けた。


 目的地が見えてくる。



 『天使の涙の研究所』



 木炭で書かれたドアプレートは、大好きな人と一緒に作ったもの。


 スピカはポケットから銀色の鍵を取り出した。


 鍵穴にさして、ガチャリ……。


 中から、青白い煙が噴き出して、スピカは息を止めた。



 もくもくと煙の中を進む。


 行けば行くほど、煙は深くなる。


「ジニア」


 大好きな人の名前を呼んだ。




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