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 手続のお姉さんが、紙とペンを差し出した。


「こちらで宜しければ受け取りのサインを。ランタンは三年にひとつだけ差し上げています。他の製作所のものがいい場合は、三ヶ月後になってしまうの」


 お姉さんはこちらを伺うように見ている。


 机に置かれた小さなブリキのランタンは、魔法の馬車のような、つぼみのような、宝石を密やかにしまう宝箱のように可愛らしかった。


「これをいただきます」


 ジャックは受け取りカードにサインをした。


 シトラスパールに塗装されたランタンの丸い枠組みは、それ自体が宝石のように見えた。


「良かったわ。では良い日々を」


「ありがとう」


 フロアを出ると、ジャックは早速ランタンに天使の涙をセットした。


 ふぅ


 石から、青い光が溢れ出したのだった。

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