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「焚き火、消してもいい?」


 スピカは穏やかに尋ねた。

 優しい火花を消したくはなかった。

 だけど、理由があった。


「熱いかい?」


 ザッザッザッ……。

 ジャックは砂をかけ、焚き火を消した。


「ありがとう。灯りを点けるわね」


 スピカはランタンのふたを開けた。


 ふぅー……


 二人は青い光に包まれる。


「青い光も綺麗だね」


「ありがとう」


 スピカはランタンを足元に置いた。

 焚き火の炭が赤く光って完全に消えた。


「私たちの国はこの光で夜を過ごしているの」


「へぇ」


「目にもいいんだから」


 スピカは穏やかに目を閉じた。


「それに、落ち着くのよ」

「本も読める?」


「もちろん。新聞の小さな字も、読めるわ」

「それは素敵だね」


「でしょう?」


 スピカは嬉しそうに笑った。

 けれど、その瞳はどこか悲しそうだった。

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