12

「ジャック」


 ジャックは三角の耳をピコ、と動かした。


「この湖は美しいでしょう?」

「うん。とても綺麗だ」


「ありがとう」

 スピカは湖を見つめた。


「昔のシリウスの小人たちも、そう感じたの」

「ここが気に入ったんだね」

「えぇ」


 湖がスピカのランタンの光を映している。

 青く、湖が発光しているようだった。


「魚も沢山いたわ。果物も、木の実も」

「きのこもありそうだね」

「あるわ。とってもおいしいのが」

「いいね」


 スピカは嬉しそうに笑った。

 だけどその瞳は悲しそうだった。


「でも……夜が長いんだね?」

「そうなの」


 スピカは夜空を仰いだ。

 夜空は、厚い雲におおわれているようだ。

 星は見えなかった。


 だけど、穏やかな時間が流れていた。

 星は今ここにもあるのかもしれない。

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