08

「僕は、あの川の上流から来たんだ」

「あっちの方ね」


「そう。ずっと上流の方から」

「オーロラも見た?」

「見たよ、綺麗だった」

「他には?」


「隣の国の春は綺麗だった」

「黄色の花が咲くのよね」

「うん。町一面にね」

「それから?」


「オーロラの国の、もっとずっと上流の……」

「ええ」

渓谷けいこくの国の、ご飯がおいしかった」

「いいわね」


「それからもっと先、ポルケから僕は来た」

「どんなところなの?」

「いいところだよ。サクラが綺麗で」

「サクラか……ピンク色だったかしら」

「うん。とても美しいんだ」

「……いい旅ね」


「ありがとう」


「ねぇジャック、私はかけっこが得意なのよ」

「へぇ」

「だけど算数は苦手」

「僕はネギが苦手だよ」

「苦手なものってあるわよね」

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