(4)
飛び込むように建物の中に入り、入り口の戸を慌てて閉めた。
畳の上にコの字形式で置かれていた座卓テーブル。揃って座っていた出席者たちが、訝しげな顔で進を迎えた。
「何かあったんですか」
その問いに、進は何度も大きく首を横に振って返した。
集会の出席者は、このあたりの集落を仕切っている部長が一人、神社総代が一人、あとは進を含め班長が四人。
進以外は全員老人だった。見覚えのある人もいれば、ない人もいた。
「配布する資料の準備をしていますので、もう少しお待ちください」
他の班長と同じように座った進は、テーブルの上に一人一個ずつ置かれていたペットボトルのお茶をあけ、飲んだ。
すると、徐々に心拍数は落ち着いてきた。
なんとなく、部屋の中を見まわす。
社殿の中に入るのは、小学生のときの子供会以来だった。
二部屋続き間になっていたのは記憶どおり。ただどちらも八畳間だったことまでは覚えていなかった。いや、当時は気づいていなかった。
やや異音を放ちながら回る壁かけ型扇風機も記憶にある。ただこれも、名入れがされている寄贈品であったことまでは知らなかった。
子供のころは気に留めなかった部分が、今は目につく。そういうことのようだ。
そして中の景色を一巡すると、やはり外で会った男の子のことが気になってくる。
オカルトの類は子供のときにもあまり信じていなかった。今はますます信じていない。しかも、あのときの子には見かけが全然似ていなかった。
だが、ただならぬ雰囲気を感じたのも確かだった。
各班長に紙三枚ずつ、資料が渡された。会計報告と今後の行事についてのものだった。
目を通すように言われたが、ほとんど頭には入らなかった。
「よろしいですか?」
部長による確認の問いに対し、他の班長に合わせるように「はい」と答えた。
あとは、神社総代が部屋の一番奥にある小さな本殿に向かって何やら祭礼的なことをして、それに合わせて手を叩き、礼をする。それだけで集会は終了した。
進は、配られた資料と中身が半分以上残ったペットボトルを、リュックに入れた。
その中には、このあとの宮薙ぎで使う予定の鎌や軍手も入っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます