置いてけぼりの森 其の一

 窓の拭き掃除を終え、職員室から出ようとした。

 声をかけられたのは、その矢先の事であった。

「ちょっとあなた、お願いがあるのだけれど」

 振り返ると、一人の教師がキャビネットの向こうからこちらを見ていた。

「何でしょうか」

 応じつつ、誰だったか、と記憶を巡らせる。

 白髪交じりのショートカット。くっきりとした目元は少し垂れ気味で、温和そうな印象がある。

 過去に一度、現国の先生が風邪か何かで休んだ際、この人が臨時で授業を進めてくれた事があったのではなかったか。

 名前は、確か。

「現国の佐伯さえきです」

「あっ、はい」

 彼女の名前を思い出すと同時、名乗られ、ふっと我に返る。

 佐伯先生はいつの間にか目の前まで来ていて「荷物を運んで欲しいの」と申し訳なさそうに笑った。「わかりました。えっと、何を運びましょう」

 佐伯先生は「良かった。ちょっとこっちに来て」と自身の執務机へ案内した。

 その最中にも、バタバタ、と教師や生徒とすれ違い、時折掃除機と出会い頭にぶつかりそうになる。

 二学期の終業式を終え、校内は大掃除の真っ只中。

 生徒もあわただしければ教師陣も同じで、業務の傍ら、生徒と協力して掃除をしている先生もちらほら。そして佐伯先生だって例外ではなく、猫の手も借りたい位らしい。

 案内された執務机の上にはまあまあな大きさのダンボール箱が置かれており、成る程、大体察しがついた。

「これをね、文芸部まで運んで欲しいの」

「わかりました」

 二つ返事をしたものの、不明点はある。

「文芸部って、どこでしたっけ?」



「先生は文芸部の顧問なんですね」

「ええ。まあ、あまり部には顔を出さないのだけれどね」

 佐伯先生は頬にうっすらと皺を浮かべ、優しげに笑う。

 ダンボールは見た目以上に重く、確かにその細身の身体では運ぶのに無理がありそうだ。

「そういえばあなた、柳田先生のとこの生徒さんだったかしら……名前は、えっと」

「文芸部は三階でしたっけ。階段の踊場からどっちに曲がればいいんです?」

「えっと、階段からだと右ね。部員が中で掃除中だと思うわ」

 先生が答え終わるのと同時、渡り廊下に差し掛かった。

「文芸部はあのあたりにあるわね」

 先生は補足するように言って、窓越しに天を指差す。

 見れば、青空をバックに白塗りの棟がそびえ立っている。

 先生が指差す先はその最上階で、文芸部の部室はなかなか見晴らしの良いところにあるようだ。

「昔はね、文芸部の部室も一階にあったのだけれど、校舎が改築されてから場所が変わっちゃってね」

「そうなんですか」

 美術室や科学室はこの棟の一階にあるため、移動教室で立ち寄ることはあるものの、二階や三階に踏み込んだことはない。

 前々からこの別棟に何の教室があるのか疑問に思っていたが、聞けば、空き教室がちらほらあるのと文芸部や他の文化系の部室で占めているとのこと。

「普段は人が来るところじゃないからね……文芸部くらいよ。大掃除で召集したのは」

 教室や職員室のある本棟とは離れていて、渡り廊下を渡り終えると大掃除の喧騒が一気に遠のく。  


   し ん。


 耳鳴りが聞こえてきそうな、少し寂しい空間。

 棟の中は何だか影が濃く、薄暗い。

「ピヨ」

 廊下を反響して、あの鳴き声が聞こえて来た。

「あら?」

 佐伯先生が首を傾げて辺りを見渡す。

「どこかに鳥でも迷い混んだのかしら」

「……あの、荷物を渡したらすぐに持ち場に戻らないといけないので、あまり長居はしませんよ」

「ええ、それもそうね」

 二人して階段を上り始めた。

 踊場に着く度、段を踏みしめる毎に、何かが迫ってきているような、そんな不安が鎌首をもたげ始める。

「何だか顔色が悪いわね。大丈夫?」

「はい。大丈夫です……いや、ちょっと気になることがあります」

「何かしら」

「過去にこの棟で何か事件が起きたり、科学では説明のつかないようなことがあったりとかは」

「なあに、それ」

 佐伯先生はからからと笑って、手を振った。

「私が在校していた頃からここを知ってる。大丈夫よ。ここでは何もないわ。安心して」

「そうですか……え、先生はここの卒業生なんですね」

 意外……ではないか。

 どんな教師だって皆、昔はどこかの学校の生徒だった。

 佐伯先生の場合、たまたま母校がこの学校だった訳だ。

「私もかつては文芸部員だったんだから」

「へえ」

 部員を召集させてまで部室の掃除をさせていたのは愛着があったからか。見れば、どの階にも人がうろついているような気配はなく、どの部室も人が出入りしているような様子はない。

 文化系の部の中で、唯一、文芸部員だけがこの時間を利用して掃除をしているようだ。

「こっちよ」

 無事に三階にたどり着いた。

 踊場から出て右に曲がり、廊下を進んでいく。

 今のところ、何も起きていない。もしかしたら考え過ぎだったかもしれない。

 ところが。

「おや」

 先を歩いていた先生が部室の前で立ち止まった。 怪訝そうな顔で、引戸を眺めている。

「どうしたんですか」

 尋ねながら先生の隣に立ち「ああ」先生の表情の理由がわかった。

「電気を点けていないのかしら」

 引戸に取り付けられたすりガラス。その奥が真っ黒であり、光が一切差し込んでいない。暗幕でも使わない限り、こんなことには。

「……変ね、あの子達は中で何をしているのかしら」

「さあ」

 一気に心音が早鐘を打ち始め、緊張が高まった。

 中で何が起こっているのか。さっきから感じる厭な予感は、これなのか。

 いや、或いは。

「とりあえず、入ってみましょう」

「あっ、ちょっと」

 止める間もなく、先生が引戸を開けた。まずい。と、身構えたのも束の間、廊下側に吹き込んだ風で厚みのある布の感触が頬を優しく撫でた。

 これは、暗幕……?

「……振り返るとね、誰もいないはずの空間から声がしたんだって……『身体をおいてけ!』って……。はい、俺の話はこれでおしまい」

「うーん。あんまり怖くないね……40点くらい?」

「いやいやマジであったんらしいんですって。しかもその教室ってのが、この教室っていう」

「それって私も聞いたことあるわ。OBのカッシー先輩でしょ。何度もボケジジイみたいに同じ話するから嫌でも覚えてるわ」

 暗幕の向こうからゴソゴソと声が聞こえ、佐伯先生が隣で「まったく」とため息をついた。

「それで、えっと、次は誰にする? っていうか何かスースーしない? 冷気みたいなのが……ちょっと寒いんだけど」

「えっ、それってヤバいやつ! 知ってるんだよね俺。こういう話してると誰か一人増えてる感じするの」

「あちゃー、やっぱり来ちゃったかー。そういやさっきから私ゾクゾク感じちゃってるのよね」

「あっ、部長そういや霊感あるとか言ってましたよね。これってそうなんすか?」

「うんうん、ビンビンに感じちゃってる。もうそこに来てるやつよ」

 ゴソゴソ声は止まる気配はなく、中にいる生徒がこちらに気付く様子もない。しかし、きょうび、百物語で盛り上がる十代というのも珍しいなぁ、なんて呑気にしている傍ら、先生には我慢の限界が訪れたようだった。

「はいはい。そういうのは部活の時間にやりましょうねっ」

 先生がガラッと暗幕を開けたことで外の明かりが中に差し込み露となった。両側には天井に引っ付きそうな程大きな木目調の本棚が設置され、所狭しと長机が真ん中に並んでいる。そして、机に囲まれるようにしてその中心にいた三人の生徒は「わぁっ」と声を揃えて仰け反った。

「ゆ、ゆうこりん先生! 何で、ていうかその子、誰」

 三人の内の一人、ハーフアップ女子が口をパクパクさせる。

 佐伯ゆうこりん先生はパチンと電気を点けるなり「あなたがいながら……!」とこれ見よがしにもう一度大きなため息をついた。

「ひぃ」

 仏のようだった先生の目が、氷点下みたいに冷たくなって、ハーフアップ女子が身を竦めた。

「それから君たちもね」

 ギロと睨まれ、短髪の男子と茶髪ポニーテール女子も気まずそうに、二人口を揃えて「えへへ」と笑った。


 簡単な自己紹介を受け、ハーフアップ女子は「東の雲と書いて『東雲しののめ』って言うんだよ」東雲さんは二年生で文芸部の部長であることがわかった。

 続けて、短髪の男子は菊池きくち君、むすっとしていて茶髪ポニーテール女子が仙台せんだいさんと紹介を受け、なお、この二人は一年生で同じ学年である。

「何か、見たことあるようなないような……本当に同じ学年?」

「いやぁ、影が薄いって評判なんだよね」

 菊池君から訝しげにじろじろ見られ、やめなさい、と間に先生が割って入って来る。

「ごめんなさい。見苦しいところ見せちゃったわね。本当はもう一人いるのだけれど……」

 佐伯先生は気まずそうに笑って、こちらを向いた。対して「あっ、いえ」以外の言葉が咄嗟に見つからない。初対面に囲まれて居心地が良くないというのが正直なところ。もう早々に退散したいのだ。「ていうか先生、その子は誰ですか? まさか入部希望者?」

 仙台さんがこちらを一瞥してから先生に向き直った。

「いえ、単に先生が用事を頼んだだけなの。職員室の掃除係さんなんだけれど、もうすぐ帰るわ」

「用事を……あっ、そのダンボール」

 先生の言葉に、東雲さんが反応した。

「まさか、職員室から持ってきてくれたの?」

「あっ、はい」

「ありがとう。ごめんね、付き合わせて」

 一連の出来事に、両手に抱えたダンボールの存在を忘れていた。

 いい加減この荷物を手放さなければ。そして、なるべく早くここから離れなければ。

「さあ、入って頂戴。適当な机に置いてくれたらいいから」

 先生が廊下側から部室へ入るよう促し「失礼します」促されるまま中へ足を踏み入れる。

 あれ?

 先生は、中に入らないのか?

「ピヨッ」

 持っていたダンボールが、僅かに振動した。

 取り落として「あわっ」ダンボールの中身を盛大にぶちまける。

「あっ、ちょっともう」

「わお、大丈夫か」

 仙台さんと菊池君がすかさず駆け寄って来た。さすがに申し訳ない。

「す、すみません」

 ぼうっと突っ立っている訳にもいかず、遅れながらも二人に習って拾い始める。

 ダンボールの中身。大量の古紙の束であったり、古い冊子であったり……黄ばみ具合からすれば、大昔の部誌のような。

「あら、大丈夫?」

 先生は廊下から心配そうに声をかけて来た。

 散らばった古紙を回収しながら「大丈夫です」と答え、いや、心境はあまり大丈夫ではなかった。何だ。何だこの違和感は。

「あれ? 何だこれ?」

 まっ逆さまを向いたダンボールを元に戻しながら、菊池君が訝しい声をあげる。

 まさか。

「ぬいぐるみ?」

 ぴーすけが、紛れ込んで。

 しかし、「いや、こんなとこにぬいぐるみがあるわけないっしょ」と菊池君はA4サイズの一冊のノートをこちらに示した。

 そのノートは一見して何の変哲もない大学ノートであるが、表紙に『絶対に絶対に見ないでくださいお願いします』と極太のマジックペンで大々的に書かれている。

「何それ」

 仙台さんが手を止めて、面白そうにそのノートを見つめた。

「ヤバい。こんなん見るに決まってる」

「ちょっと仙台さんも。さっき怒られたとこでしょ」

 言いつつも、東雲さんも興味津々という風に菊池君の傍に寄る。

「ちょっと読むくらいならいいですよね。だって誰かの失くし物かもしれないし」

 気付けば仙台さんも菊池君の横に並んでいて、三人揃って準備は万端となっている。これはまたしても怒られるやつではないか。振り返るも、先生は既に廊下にいない。まさか、もう職員室に戻ったのか。

「じゃあ、開きまーす」

 ペラ。

 菊池君がノートをめくり始めた時だった。

「ピッ」

 廊下の奥から鳴き声が聞こえた。

 一気に背筋が粟立ち、つんざくような耳鳴りがした。

「やめ」「やめなさいあんたたち」

 ダン、と後ろで床を踏み鳴らす音が聞こえた。

 振り返ると、眼鏡をかけたショートボブの女子が仁王立ちで三人を見ている。

「先輩……随分遅かったんですね」

 菊池君の言葉に続き、東雲さんが「本当、もう掃除も終わる頃なんだから」取り繕うように大ボラをふく。

「掃除って、他人の秘密を覗き見することかしら?」

「秘密も何も、これ、誰かの失くし物かもしれないんですよ。紛れ込んだみたいで」

 突如現れたショートボブ女子に詰め寄られ、仙台さんが誤魔化すように笑う。見抜いてかそうでないのか、彼女は「ふう」とため息をついて今度はこちらに向き直った。

「それで」

 普段は温和そうな大きな垂れ目が、今は逆三角形だ。思わず「ひっ」と身がすくむ。

「もしかして」

「はい」

「入部希望者?」

「……いえ。ただの荷物持ちです」

 例え入部希望者だったとしてもこの雰囲気では届けを出さんだろう。

 答えると彼女は「そう。付き合わせちゃってごめんね」と少し残念そうに笑った。

「二つの宮で『二ノにのみや』。二年生だよ」

「はあ……はじめまして」

 唐突に始まった自己紹介にたじろいだ。二ノ宮さんは「うん」と答えるなり無言になり、何だか微妙な空気が二人の間に流れた。それにしても彼女は先生が言っていたもう一人の部員……なのだろうか。何だか、

「そうだ! それで、これどうする? ノート!」

 東雲さんが菊池君からノートを奪い取り、二宮さんにその表紙を突き付けた。

「知らないわよ」

 二ノ宮さんは冷たく言い放ったが、数秒後に「でも、確かに中身を見ないと誰の物かわからないかも」と、考え込むように顎を撫でる。

 そんな面々の様子に、呑気な、と苛立ってしまう。

 何故だろうか。

 鳴き声が聞こえるからか。

 いや、違和感があるのだ。理屈はわからないが、とんでもなく重大な何かを見落としているような気がして。

「じゃあ、改めまして」

 東雲さんが菊池君に代わって例のノートを検めようとする。そうだ。それは。

「開かない方がいい」

 気付けば語気強く主張していた。

「な、何? 急に」

 仙台さんが唖然とした表情でこちらを見ている。

 いや、彼女だけじゃない。他の三人も同じ表情だ。

 はっ、と我に返る。

「ちょっと、さっきからあんた」

 仙台さんが三人から離れ、こちらに詰め寄ってきた。

「荷物を持ってきてくれたのはありがたいけどね、もうそろそろ帰ってくんない」

「いや本当、俺もそろそろ帰ろうかな」

 仙台さんの肩越しに、菊池君の声が聞こえた。

「はあ?」

 彼女が振り返る。

 見れば、菊池君は適当な椅子に座っていて、少し前傾姿勢だ。そして何だか顔色が悪い。

「何か悪寒がするんだよな。それに、めまいっつうか、ちょっと気持ち悪い」

「さっきまでピンピンしてたのに、そんな急に具合悪くなるもんなの」

「確かに変だ。でもな柚希」

 肩で息をしながら、菊池君が仙台さんを見返す。

「ここにいるのは、東雲先輩と二ノ宮先輩、そして一年の俺ら……それとそいつだ」

「何が言いたいのよ」

 二ノ宮先輩が訝しい顔をする。仙台さんも同様の表情を浮かべるが、東雲さんは何か察したように「やっぱり」と独りごちる。

「何が『やっぱり』なんですか? 部長」

 仙台さんが苛立たしげに拾ったが、その代わりのように、おそるおそる菊池君が答えた。

「……一人多い。そんな、気がする」

 じいぃっ。

 ねとつくような、視線を感じた。

 部室の四隅。本棚の影。机の真下。通気口のメッシュの向こう。

 あらゆる薄闇から、害意が伝わってくるような。

「……ちょっとやめてよ。さっきの続き? もうやめにしようって」

 気味悪げに言って、仙台さんが外側の窓に向かう。陽の光を採り入れたいのか、彼女は暗幕の端を掴んで一気に引き開けた。

「……なんで」

 外に暗幕がかかっているのかと思った。

 それほどまでに、窓の外が暗い。

「まだ、昼だったのに……!」

 仙台さんがわなわなと震え、声を漏らす。

 無理もない。自分だって目を疑う光景だ。

 曇り空でも、雨が降っているわけでもない。陽が陰っているだけの暗さというものでもない。天には満月が昇り、点々と星が煌めいている。

 それは、完全なる夜の様相。

「マジか」

「ありえないわ。こんな……」

 菊池君が唖然とする傍ら、二宮さんが窓辺に駆け寄り、仙台さんの隣に並ぶ。

「何時……ねぇ、今は」

 仙台さんが震える手で携帯を取り出し、ディスプレイ画面を凝視する。しかし「嘘でしょ」呻くように声を漏らし、ただならぬ雰囲気を察した。

 そして、まさか、と自分もポケットから携帯を取り出す。

 21時00分。

 圏外。

 これは……。

「訳わかんねぇ。これガチのやつかも……俺、やっぱり帰るわ」

 菊池君が学生鞄を掴み、半ば逃げるようにして横を通り抜けていく。

「あっ、ちょっと菊池君!」

 東雲さんが引き留めようとしたが、「こんなん気味悪いっす。部長も……皆も早く帰った方がいいかも」菊池君は早口で言い、引き戸の取っ手に手をかけた。

「待って! 何か変な……」

 視界の端で、何かが動いた。

 ペラ。

 机に放置されていた例のノート。

 それが、ひとりでに開き、頁をくった。

「っ」

 皆、菊池君に気を取られて異変に気付かない。

 そして、その隙をついたと言わんばかりに、ノートは次々と頁をくる。

「じゃあ、また三学期で」菊池君が廊下に飛び出て

「……あ?」その動きが固まった。

 菊池君は、廊下の奥を見ていた。

 向こうから迫って来た何かを捉えたかのように、視線が一点に釘付けとなっている。

 パタン。

 扉が静かに閉まった。

「ピヨ」

 その途端、

「あああああぁあぁあああぁあああぁあぁぁあああぁああああぁあああぁぁぁぁぁぁぁああぁあぁぁぁ!」

 叫び声が部室の向こうからこだました。

「な、何。ちょっと圭介」

 仙台さんが血相を変えて廊下に飛び出る。

 東雲さんと二ノ宮さんも遅れて後に続いたが「き、菊池君……!?」彼の姿はもうそこには無かった。

「圭介!」

 仙台さんが廊下の向こうへ声を張り上げる。

 しかし、きっと、本人には届かない。

 見れば、菊池君がさっきまで担いでいた鞄だけが、彼女の足元に残っている。

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