第36話
「そのパターン凄く見覚えあります!」
「今恵奈ちゃんが着てるのがそうだもんね」
まず、既視感のある服から見てみよう。
琴音が宝箱から取り出すそれは、きめ細かいシルクの様な光沢が美しい生地で仕立てられたローブ。金糸や銀糸織りなす荘厳な仕立ては、高位の聖職者が身に纏うが如く神々しさを感じるが、至る所にフリルが散りばめられている為か女の子らしい一着だ。
だが、恵奈のパターンとの違いが一つある。
「ローブだけなんだ?」
そう。宝箱を確認しても内容物はローブ一着であり、恵奈の時の様に装備一式というわけではない様だ。
この事から推測するに、
「多分だけど、5階層の主を一人で討伐できれば装備が獲得できるんじゃないかな?」
前回、二人で倒した時に【罠感知】のスキルオーブが被ったことがある。数多あるスキルの中から、同じ物が二つ出現する確率は途方もなく低いはずだ。
運悪く被ってしまっただけかもしれないが。
「なるほどね・・・じゃぁ今度一人で挑戦してみようかな」
「琴音ちゃんなら大丈夫。頑張ってね!」
ゴスロリ系なのがネックだが、”孤高なる衣装”の性能を知る琴音は一式欲しいと考えた。
恵奈よりは低いとはいえ、一人でも十分討伐可能なステータスを有しているので、問題ないだろうと恵奈は、琴音に対して応援の言葉を投げかけた。
続いて腕輪。
銀が主材の細やかな装飾の施された一品。特徴的なのは5箇所に透明な水晶のような宝石が埋め込まれている点だろう。特にカットされてる様ではないのでダイヤモンドでは無さそうだが、芸術的価値は高いと見た。
が。
毎度の事ながら”鑑定”等のスキルが無いため詳細不明である。
「だったら付けてみるしかないよね!」
という事で、一つ装着。
すると、なんと無く効果がわかった。
「これ、装備品プリセットみたいだよ」
装備品プリセット。
RPGなどのゲームでは、自身の操作するキャラクターに装備品や装飾品を装着する為にプリセットを弄るだろう。その弄った後の結果を保存しておくことが出来る腕輪だった。
更に凄い事に、登録した装備品は一瞬で着替え終えることが出来る。
簡単にいうと、普段着で生活した後にダンジョンに潜ることとなった時。今までは”孤高なる衣装”を一から着替えていたが、このプリセット機能を使えば一瞬でゴスロリ化できる、ということだ。
便利なアイテムを貰った。
「はいこれ、琴音ちゃんの分ね」
「ありがとう!」
幸い二つあったので、一つはプレゼントし、琴音もこの便利な機能を享受できる様にする。
まだ装備品を有していないが、直ぐに使える様になるだろう。
これで全てのドロップアイテムを確保できたので、一旦【共有空間】の扉を開いて島に持っていく。量が量だけに以外と時間がかかってしまった。
アイテムボックスの様な魔道具かスキルが欲しい。
「さて・・・次は11階層だね!」
「うん、さっそく行こう!」
ボス攻略後の部屋の奥には、新たに通路が出現する。そこを伝って階段を下ると、何やら太陽光の様な眩い光りが差し込んでいた。
一体、なんだろうか。
とても明るい。
そう思いつつ通路を抜ける。すると、目の前には———
草原が広がっていた。
野草生い茂り、空へと伸びる木々。何処までも続く蒼穹。
数キロ先に虹の膜がうっすらと見えなければ、ここがダンジョンの中だと思えない現実的な光景が広がっている。
「お〜・・・これは、共有空間の強化版見たな感じなのかな?」
「ダンジョンな内部に草原や海はあるあるだよ。でも原理から考えると共有空間とおんなじかもしれないね!」
なんて出口から観察していた———途端。
「「えっ!」」
突如として、遠方の森の方から火柱が出現し、山火事の様に炎と煙が広がる。最初は火山か何かが噴火したのかと思った。が、狙撃手として目の良い恵奈が、木々の隙間から原因を目撃する。
「あれは・・・ドラゴン!」
と、驚きの声を上げた瞬間、原因が森を飛び出し、空を駆ける。
長い尻尾を有し、太陽光に反射する赤く堅そうな鱗を纏い、口から火炎放射の如く烈火の炎を撒き散らす、二対四枚の翼で力強く空を飛ぶ姿は正にドラゴンそのもの!
「いや
期待して損したって琴音がジト目で見てくる。
「で、でもドラゴンって入ってるからドラゴンでしょ?」
「確かに入ってるけどさ、違うじゃん!」
ごめんて。
なんて戯れていると、赤トンボが何処かへと飛び去り姿を消した。かなり先へと飛んでいった事から、この階層がとんでもなく広い事が確認できた。
さて。
「あのドラゴンさ、何もない唯の森を焼き払う習性があると思う?」
「有るでしょ。だって
ごもっともです。
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