第35話
ボスが死に絶え、大量のドロップアイテムと宝箱に変わった後。
大魔法を連発した琴音が、もう限界と言わんばかりに座り込んだ。聖結界で二人を守りつつ大軍を滅却した彼女の活躍は恵奈を超えた事だろう。
成長を感じられて恵奈は感激である。
「お疲れ様。インフェルノなんて魔法あったんだね?」
「い、いや・・・はぁはぁ・・・無い、よ」
「?」
聞けば、あの大魔法に名前はない。
全てを焼き尽くす焼夷弾をイメージしてそれがインフェルノ。強力な竜巻をイメージしたのがトルネード。と、実際は唯の火属性と風属性なのだが、名前はそれっぽかったからつけただけであるらしい。
琴音ちゃんもお年頃だねぇ。私が言えることではないけど。
しかし威力は本物で、実際に蟻の多くを殲滅したのが琴音である。
ただ代償も大きかった。
まだ【全属性魔法適性】のレベルが低い状態で、これほどの広範囲を高温で焼き尽くすレベルの炎を生成するには莫大な魔力を消費。アリたちから【吸収変換】で魔力を回復しても足りてなかった。そして追加の竜巻である。
結果は、今の琴音の魔力切れを見れば一目瞭然。次のモンスターが出現しないボス戦だったからこそ限界を出せた形である。
「ふぅ〜・・・やっぱり魔力切れって辛い・・・」
幸い【魔力自然回復速度上昇】を取得しているので回復速度は早いが、それでも身体的な疲労は回復しない。
なので、これの対処法として確立された方法がある。
「それじゃぁ頂くよ恵奈ちゃん」
「うん・・・来て」
それは、恵奈に対して【吸収変換】を発動することだ。
「うぅ、なんか魔力が吸われてる嫌な感覚だね」
例えるなら、蚊や蛭に血を吸われている様な、嫌悪する感覚に近い。しかし琴音が回復するならば喜んで差し出すのが恵奈である。
魔力タンクとしての役割を忠実に守り、普通に耐えた。
消費される魔力は【高速魔力回復】の影響で素早く回復する一方、カロリーの様なものを多く消費する為お腹が減るのでカロメを頬張る。
「だいぶマシになったよ、ありがとね恵奈ちゃん!」
「どいたま」
さて、琴音が動けるまでに回復したこ事を受けて、今の今まで放置されていたドロップアイテムの確保に移行する。
「いっぱい落ちてるね!」
「あんなにいっぱいの兵隊アリが居たらそりゃねぇ?」
集めるのが面倒そうだね!と苦笑いしつつ、まずは魔石などの小物を一箇所に集める。
内訳は魔石が9割。その他1割であった。
その他は、外殻などの身体パーツが殆どであり、唯一の例外として3つだけ黄色い液体が詰まった小瓶が確認されている。
粘着質の液体な為、ポーションの様にな見えない。
「兵隊アリの魔石だけで数百あるよこれ」
「換金できる様になったら一体幾らになるのやら・・・」
想像を膨らませつつ、続いて女王アリのドロップアイテム。
まず目につくのは、10cm超級の巨大な魔石。今まで見てきた中でも最大サイズであり、まるで宝石の様な見た目から、装飾を施せばオブジェクトに成りうる美しさがある。
現状、利用方法がないのでオブジェクト一択なのだが。
そして外殻や牙などの身体部位の数々。量はそれ程でもないのだが、元となったモンスターが如何せん巨大だったので、ドロップアイテムもビックサイズ。
中には恵奈たちの身長ほど大きさを誇る部位もある。とても重そうな見た目だが、以外と軽量だった。
続いてその他。キラキラとした不思議な輝きを放つ兵隊アリのドロップにもあった瓶の上位互換の様な物が1つ。スキルオーブが3つ。10kgほどある銀(?)の延べ棒が5本。宝石箱に入った親指サイズのカット済みルビー1つ。
であった。
「やっばいルビーでちゃったんだけど!?」
「凄く綺麗・・・しかも大きくない?」
宝石は質をD〜Sランクで測り、重さでカラット数が決まる。大体0.2gが1カラットであるが・・・
寸分狂いも無いオーバルブリリアントカットのルビーは色濃く綺麗なので、素人鑑定でも品質の高いBランク以上は確定。それでいて恐らく10g程度。つまり50カラットは確実に超えている重量。
最低品質でも10カラット以上は20万円ほどの価値がある。
つまり。
「「目が飛び出る金額・・・ってことぉ⁉︎」」
宝石箱から覗くだけでよかった。触らなくて良かった。と、価値にビビる恵奈たちだった。
協議の結果、取り敢えず慎重に扱い、厳重に島に保管することとなった。
そして最後のメインディッシュ。
特別報酬として出現した宝箱2つ。前回の様に内容がアナウンスされていない事から、何が入っているのかはお楽しみである。もちろん【罠感知】には反応がない為、安全に開封することができる。
「それじゃぁ開けるよ」
「「せ〜の!」」
がこっと蓋を持ち上げる。
「「おぉ!・・・おぉ?」」
恵奈の開けた宝箱からは、銀装飾の腕輪が2つ。琴音の方からは白を基調とした衣服が一着入っていた。
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