第29話
「んぅ・・・?」
暖かな日差しと、穏やかな漣が織りなす涼しげな音に目を覚ます。
屋外。しかも人工物が視界に入らない大自然な所でなんで寝てるの?と、驚きに目をぱちくりさせる恵奈。
そして思い出す。
そうだ、昨日は島で睡眠を取ったのだと。
と言うことは、隣に琴音ちゃんが眠っている・・・と、視線を滑らすと、可愛らしい寝顔が目に入る。彼女は恵奈の胸にむにっと顔を埋めるような体勢で眠っている。
「なんか赤ちゃんみたい・・・」
片手が空いているので、その手で起こさぬように頭を撫でる。
髪からはシャンプーなどを使用してないにも関わらず、女の子の甘い香りが漂う。
髪から匂いを嗅いだことは何度もあるのだが、付け根とか頭皮に近いマニアックな場所から嗅いだ事がないなと思い出したので、恵奈は顔を埋めて深呼吸してみた。
「良い匂い」
なんか変態っぽいことしてるな。
メタイこと言うと、確か若い女の子の体臭成分がどうたらだとか、有名製薬会社が解明してた気がする。その成分を利用してボディーソープになったりとかなんとか。
さて、朝の準備をしますか、洗顔や歯磨きができない環境なため【生活魔法】浄化を使用して済ませる。
もちろん、寝てる琴音にも施した。
「・・・んぁ?」
暫くして琴音が目を覚す。彼女は以外と朝に弱いのでゆるゆるな表情を隠せない所もまた可愛らしい。
「おはよう琴音ちゃん、良い朝だね!」
「お、はよ・・・」
琴音は直ぐに起き上がることはないので、私だけ先にベットを出て朝食の準備をする。ここには調理設備がない為、本格的な朝ごはんは作れない。なので昨日に購入したレトルトなどの保存食が早速活躍する。
だが、流石にカレーなどでは重すぎる。
と言うことで、普通にレトルトご飯とふりかけ、即席味噌汁、魚や野菜の缶詰。ドレッシングはお好みで。水は魔法、火も魔法で代用する。
できたものをお皿に盛り付けた所で漸く起き上がれた琴音がやってきた。
「おはよう、朝ごはんできてるよ。さ、食べよ」
「うん、いただきます!」
「いただきます!」
食事は保存食中心の構成だが普通に美味しい。しかも、場所が場所なのでバカンスにでもきてる気分ということもあり、貧相な食事でも特別感がある。
「「ごちそうさまでした」」
量も多くないので直ぐに食べ終えると、浄化を使って食器等を綺麗にする。
軽く食休みを挟むと、漸くダンジョン攻略の時間がやってきた。
「今日は6階層を目指すでOK?」
「OKだよ。ただ、下に行くには階層主を倒さないといけないからね、準備運動がてらサクッと殺っちゃおう♪」
パパっと着替えを終えた琴音ちゃんが、ゴスロリ服の着付けを手伝ってくれる。人形を着せ替えてるみたいで楽しそうなので、されるがまま。
「音符つけても怖いからね?———っと、終わったよ!」
「えへへありがと。じゃ、出陣!」
相棒たるDSMR-01を取り出し、扉を開く。
恵奈の自宅からダンジョンに向かい、さくさくと先に進んだ。
*****
「あ、スキルオーブだ」
「へぇ〜これが言ってたやつなんだ。不思議な物だね!」
恵奈に至っては3回目なので、ある程度の攻略法が身につけば5階層の主は障害になり得ない。どれだけ最速で討伐できるかRTA状態だ。
【聖結界生成】に慣れた琴音の援護も合わさって、身動きを封じられた蠍は徹甲弾の連続射撃により簡単に撃破。その際、ドロップアイテムに何時ぞやのスキルオーブが含まれていたのである。
既に一度使用済みなので、琴音に使わせることにした。
「いいの?」
「私は一回使ってるからね。試しに使ってみなよ」
ありがとう、と言いつつ使用を試しみた琴音。スキルオーブが粒子に変わり琴音の体に吸い込まれるようにして消えていく。
幻想的な景色だった。
「どんなスキルだった?」
「【罠感知】だって。これ恵奈ちゃん持ってるよね?」
頷く。
もしかしたら、この5階層のボスで得られるスキルオーブの中身は【罠感知】で固定なのかもしれない。なにぶん、確認例が2つしかないので本当かどうかわからないが。
「スキルオーブは出るけど装備品とか出ないなぁ〜私も恵奈ちゃんみたいに何か欲しい!」
「あはは・・・まぁこれは偶々だからね」
因みに琴音が来ているのは普通の服であり、防御力は紙装甲。先の蠍から一撃いただいただけで簡単におはだけしてしまいかねない危険な服装であり、危険がつきまとうダンジョン攻略においては好ましくないナンセンスな服装だ。
だが、残念な事に防御力が高い服。
例えば、軍が使うような防弾チョッキ等を所持していないし、本物を買うお金もない。仮に購入した所で届くのは数日後。
その間にも冬休みが削れると考えると、安全面は【聖結界生成】でカバーするのが利口だと判断した為に普段着で攻略することとしている。
「さてさて、次が6階層ですよ琴音ちゃん。そんな装備で大丈夫かい?」
「大丈夫、問題なし!」
恵奈たちは意気揚々と、次の階層へと繋がる階段へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます