第26話


お店から台車を借りつつ向かったのは駐車場。L1と番号が振られたスペースに一台の白い軽乗用車が停車している。


恵奈の車だ。


まだ高校生だが、18歳且つ3年生の10月を過ぎると自動車免許を取得しても良いという校則があり、田舎の方では車を利用しないとままならないからと家族に勧められて免許を取得した。


車は中古車だが、年数はそれほど経過しておらず乗り心地もまあまあで意外と気に入っている。


電子的にロックを解除しバックドアを開き、後部座席を倒す。


「いくよ〜せーの!」

「よっと!」


台車から二人で持ち上げるテーブルキット等を詰め込む。ステータスがあるので重くはないのだが、衆人環視の中なのでバレない為のカモフラージュ的な意味合いがある。


しまい終えると、ロックして台車をお店に戻した。


「次は保存食を調達する予定だけど、数日のキャンプ恵奈たちが定めたダンジョンの隠語だし日持ちするならレトルトでも大丈夫だよ」


初めは缶詰とかを予定していたが、数年も籠るわけではないので、日持ちさえすればなんでも良いよね?と言うことで、レトルトも可とした。


水が必要なタイプの食料でも、恵奈は【生活魔法】で飲料水を生成できるから問題ではない。


因みに料理器具さえあれば【生活魔法】のみで料理を行うことが可能である。


魔法ぱねーっす。


「私カレー食べたい」

「ならパックに入ったご飯も買わなきゃ」


琴音がカートに放り込んだのは甘口カレー。某有名メーカーが手掛けるこの製品は甘口なれどほんのりと丁度良い加減な具合にピリッとした辛さが病みつきになる。


「やっぱりカレーは甘口だよね!」


恵奈もこのカレーは大好物だ。


「そう、甘口じゃなきゃダメ!琴音の家族はなんでか知らないけど中辛ばっか食べるんだよね。舌どうなってんだろ?異常じゃない?」

「アレって痛みを感じたい人向けだよね。辛すぎて美味しく感じないし」


辛いのはマジで食べられない二人からすれば、甘口以上を食せる人は勇者だと思う、という偏見がある。


因みに恵奈は、一時期カレーを見るのも嫌になった時期がある。


と言うのも、実家には美味しいカレーを作ってくれるおばあちゃんがいるのだが、遊び心で隠し味にバナナを投下。もれなく大惨事になったことがある。


あの形容し難い味はトラウマだった。でも、残すのも悪いので全部食べた。


正直、あの時は私なにか悪いことでもしちゃったの?と何もしてないのに罰を受けたような、拷問のような時間だったが、今は普通に食べられる。


「これぐらいで良いよね?」

「足りると思うし大丈夫だと思うよ」


カートいっぱいの食料品を買い込むと、レジで会計を済ませる。お菓子はジュースなども購入したのでお値段1万円に届きそうだった。


これらも車にしまいに戻った。


続いて、恵奈がとっても楽しみにしていた場所に行く。


「さぁやって来ました水着専門店!」


色とりどりの可愛らしい水着が並ぶ水着専門店。冬でもずらりと水着が並ぶその光景は、今の季節が夏のように錯覚してしまいそうだ。


因みに冬なので水着の利益少ないらしく、併設されてるランジェリーコーナーの方が売れ行きがいいらしい、と、以前かわいい下着を購入した際に店員から聞いた。


いつもお世話になっています!


「ねぇねぇ琴音ちゃん私の水着を選んでよ!」


琴音のセンスに間違いはない。


「なら二人で選び合いっこしようっか?」

「うん!」


恵奈もゴスロリ着出したりするが、一般的なセンスの持ち主である。


さて、こうして決まった選び合いっこだが、一つの取り決めを行なった。まず、二人は別行動を行い30分後を目安に集合した時に初めてお互いの水着を知ることができる、と言うもの。


しかも、知れるタイミングは事前に用意した試着室の中なのでドキドキ感がある。


「じゃぁスタート!」


選び合い大会が始まり、早速別行動となった。


『琴音ちゃんはスタイルも良いし委員長っぽい見た目だからね、かっこいい黒一色のようなビキニは絶対に似合う。それは確定演出だけど、私的には琴音ちゃんは可愛い存在。だから、個人的にはフリルを満載したようなものを着て欲しい・・・どうせだったらエロいのも・・・』


ハンガーに掛かる水着を手に取り、実際に琴音ちゃんがきたらどのように見えるか妄想する。エロくてもいいかっ!と思ったのは、他人の目がない二人しか辿り着けないところだからだ。


『まずビキニかワンピかで迷うな〜・・・清楚で可愛いって言ったら白くてフリルついてるこのワンピでしょ?でも、こっちのオフショルダーも捨て難い・・・え、待って!スク水あるじゃん。ネタ枠かな?でもこれもいいなぁ〜』


決まらない時間が過ぎていく。この葛藤が心地よい。


「楽しいなぁ〜こういうの」


選んだ水着を好きな子が着てくれる。選んだ水着で喜んでもらえたらこんなに嬉しいことはないだろう。


だから真剣になれる。


更に十数分後


「これにしよう!」


当初の予定通りフリル満載なタイプを選択。これを持って試着室前に向かうが琴音はまだなようなので、試着室内に水着を隠しておいた。


「私にどんな水着を選んでくれるのかな?」


楽しみでならない。


なんて思っていたら琴音がやってきたので、彼女の持つ水着を見ないために試着室の中に入る。琴音は隣にある試着室に恵奈用の水着を隠したようだ。


「恵奈ちゃん準備できたよ!」

「わかった!」


外に出る。


これで、双方の準備は整った。これより試着会を開催します。

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