第25話
「ふぅ〜お疲れさまぁ」
「お疲れ様〜」
ボスを倒し、ドロップアイテム等を回収し一旦攻略を止めて自宅へと帰還した恵奈と琴音は、ダンジョンで味わった戦闘の余韻を鎮めるべくソファーに身を沈める。
ダンジョンでは気を抜けないので、こうして何も考えずにボーっとできる時間は貴重に感じた。
「・・・暫く休んだら買い物行こうね」
本当なら先の6階層へと向かいたかった。
しかし、5階層より先に進むにつれて戻る時間を考えると一旦戻って物資を調達してからの方が長く、そして深くダンジョンに篭ることができる。
「うん。ついでに【共有空間】内部に置く家具とか買おうよ!」
「それは良いね!」
2人は数日間ダンジョンに潜る計画を立てていた。
その計画では【共有空間】を大いに活用する予定であり、生活拠点として利用する。その為に保存の効く食料品や日用品を買い込みに行くこととなったのだ。
あれ買いたい、これ買いたいと案を出し合いつつ、メモにする。
「・・・なんかこの内容、一緒に同棲するみたいだね!」
小さなテーブルと椅子、二人分の食器、ベットなどの寝具一式。調味料、食料品を保管できるボックスなど、まるで同棲カップルや新婚さんの暮らす家用セットのようだ。
琴音ちゃんと二人暮らし・・・なんてエモいんだ!と、嬉しさにニマニマ。
「私と一緒に幸せに暮らそうね琴音ちゃん!」
「はぁ・・・」
ジト目が飛んでくる。
そんな目で見ないでよ・・・
*****
と言う経緯でやってきたのは、日用品から家具など様々な商品を取り扱う複合施設イ○ンモールショッピングセンター。
内部は子供連れの親子や学生など、平日にも関わらず多くの人々がショッピングを楽しんでいた。
「冬休みだから学生も多いね〜」
「かく言う私たちも学生だよ?」
「それもそうだね」
にも関わらずなんて言えなかったや。
さて、二人して他愛もない会話をしつつ最初に向かったのは家具をメインに扱うお店。台車を押しつつ家具を物色する。
「あっこれ可愛い!」
白い天板に黒猫のシルエットがちょこんっと小さく配置された少人数用のテーブル。委員長みたいな雰囲気してるのに可愛いもの大好きな琴音ちゃんに和む。
「じゃぁそれにしよっか?」
「うん、これ買う!」
テーブルの説明パネルに書かれていた番号から、段ボールに刻まれた同じ番号の組み立てキットを取り出し、台車に置く。
前だったら絶対重くて一人で持つのも苦労しそうな重量物でも、ステータスとレベルの力が合わさることにより簡単に持ち運びできる。
20kgは確実に超えてるが、全然重く感じない。
ただ、恵奈の見た目は少女そのものなので、重量物たるテーブルキットを抱えて歩くのは違和感がある。ダンジョンを知ってる人はステータスを得ていると気づいてしまうかもしれないし、何より悪目立ちしてしまう為、おとなしく台車に乗せた形だ。
ステータスが一般的になれば、こんなこと気にしなくても良いようになるんだけど、そんな日は多分もっと先のことなんだろうなと思う恵奈であった。
続いて寝具コーナ。
「やっぱり柔らかいマットレス一択だよね!」
「硬いので寝たくないし、今後も使っていくものだから高いの買っちゃおう」
「そうしよっか」
座ってみたり、手を沈めて感触を確かめつつ、二人が納得いくものを発見する。それは低反発素材を全面的に採用し、人間工学に基づいて作成された最新鋭のマットレスだった。
「低反発って良いね。お高いけどその分、私が使ってるやつよりも絶対寝やすい」
「だね!私もこれにしよっかな〜」
「ちょちょちょ!」
と、琴音が二つ取り出そうとしたので、慌てて止める。
「どしたん?」
「それはお金の無駄だよ!」
手で×を作って力説した恵奈だったが、琴音にはどうして止めたかの意図が透けて見えている。言われずともわかる。恵奈は私と一緒に寝たいのだと。
琴音とて鈍感ではないので、恵奈が自身に向ける、本来なら異性に向けるような特別な感情に気がついている。
なので、一般的な感性からすると一緒に寝るのはちょっと・・・と遠慮したくなるだろう。もし襲われると怖いと言う理由から。
しかし、琴音は知っている。恵奈はリアルでも作品でも強引に及ぶ行為を嫌っており、双方の合意のもとが一番いいんだよっ!と言うくらいなので、それを自分自身で行うなんてもってのほかと思っていることを。
だから安心して一緒に眠ることができる・・・のだが、琴音的には強引なのもありである。なんと言うかもどかしい!一気に来いよ!と思ってたりする。
・・・
「それなら大きいサイズのを一つ買おっか?」
「YESっ!」
恵奈は満面の笑みを浮かべた。
*****
「お支払い金額は9万7千円です」
「10万円で」
テーブルやマットレスの他にも枕やシーツなども含めると、相応の額に達した。
共用のものなので、二人で折半することとなったが、一高校生には痛い金額である。いずれドロップアイテムの売却で利益があるので(多分)普通に支払うのだが、やはり厳しい出費だ。
これからは保存食なども買わなければならない為、懐が一気に冷気を帯びだすのを見て見ぬ振りするしかない。
後で口座から引き出そう。
恵奈と琴音の内心が一致した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます