第21話


さて、恵奈の魔力も回復したので、【聖結界生成】の訓練を再開する。


前回は特に制御することなく、一気に魔力を消費しての発動だった為に魔力切れを引き起こしてしまった。しかし、今回は新たに取得したスキル【魔力操作】を使用する。


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スキル【魔力操作】

 ・魔力の扱いが上達する。

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まだ低レベルだが、魔力単体を自分の意思で操作できるようで、少なく流したり、多く移動させたりも可能なのだとか。


「それじゃぁいくよ!【聖結界生成】全ッ開‼︎」


・・・全開?


先ほどと同じく白金色の結界が生成されるが、前回との違いは、琴音を囲む様にして出現していたドーム型ではなく、一枚のガラス板の様な障壁だった。


この様にすれば、全方位からの攻撃は防げない代わりに、一方面だけの展開なので魔力消費が少なくて済む。つまり、持久戦が可能となったのだ。


ただ一つ気になるとすれば。


「なんで六角形ハニカム構造なの?」

「結界と言ったらA○フィールドに決まってるじゃん!」


やるとは思っていたよ。


あの人造人間が好きなら、結界魔法で再現したくなるよね。


因みに、この障壁結界は魔力を常時消費して維持しない代わりに、発動時に込められた魔力分だけの攻撃を防ぐと自然消滅する設定にしているそうだ。


「どれくらい魔力使ったの?」

「大体50くらいだよ」


琴音によると、その場に停滞しているだけでも内包魔力を消費しているらしい。ということで、早速だが恵奈の狙撃銃DSMR-01の射撃による防御性能検証を行う。


弾倉を装着し、レバーを引いてリロードする。


装填された弾種は通常弾。


「撃つからちょっと離れてね、危ないから」

「OK〜」


少し距離を取る琴音を確認した後。恵奈は照準に定まるAT○ィールドの中心部めがけて引き金を引いた。


バシュッ‼︎

ふよよん・・・


「「おぉ!」」


なんと、撃ち出された12.7mm弾は、まるでスプーンで叩かれたプリンの様な柔らかさの結界に狭まれてエネルギーが吸収され、コロッと地面に転がる。


生成されたA○フィールドも霧散した。


どうやら通常弾は防げたが、内包魔力分全てで受け止めた為に消えてしまった模様。しかし、通常弾とはいえ強力な弾丸の一撃を防げた事は賞賛に値する。


琴音ちゃんは素晴らしい職業特性を得た様で何よりだよ。


「発砲音ってもっと大きいのかと思ってたけど、案外小さいんだね?」

「サプレッサー様様だよ」


琴音はFPSをやっているので、サプレッサーという装備自体は知っている。だが実際に目にし、眼前で発砲する瞬間を目にしたことはなかった。


日本に住んでいたらそんなもんでしょう。


「通常弾1発に耐えられるから、このダンジョン4階層までの敵なら絶対に突破できない結界だね」

「じゃぁ次お願い!」

「うん!」


その後、徹甲弾と徹甲榴弾を試す。


結論だが、徹甲弾は普通に貫通。徹甲榴弾は貫通はしなかったものの内部爆薬が炸裂した影響で障壁を破壊する、という結果となった。


「余り信用しちゃダメだけど、これなら蠍の攻撃を2〜3回は耐えられるんじゃないかな?」

「いつか合間見えたら絶対に突破できな結界強度で対峙してやるからね!」


おお、頼しい。


因みに結界の活用方法だが、意外と万能であった。


まず、結界を横に展開し、その上に足をついてジャンプしていく、所謂空中歩行や跳躍が可能となったこと。結界を完全に透明化させて見えない罠とすること。展開した結界を移動させて対象物に追突させること。対象を囲む様にして身動きを封じること。


などが応用としてできることが判明した。


現状でも回復職兼支援職なのに、琴音によるとこれから剣術等の戦闘職も加わる予定。もう完全な万能職と化す勢いだ。


驚くことに、琴音はまだレベル1である。これからの成長が楽しみでならない。


「ドロップアイテムとかに剣が見つかったら琴音ちゃんにあげるね」

「ありがとう、とても助かるよ!」


粗方、感覚が掴めたのでダンジョン攻略を再開する。


そして、訓練の成果が実った。


「えいっ!」

———ス

グチャッ


細長い棒状の聖結界を生成し、突きの要領でカタツムリに飛ばす。結界の強度は任意で変えられるので、鋼鉄の様に頑丈な物体による突撃を受けたカタツムリは耐えられずに消滅した。


「成功だね!これなら問題なく戦っていけそうだよ」


無論、4階層までならばという注釈が入る。


「恵奈ちゃんも凄いよね、撃たなくても倒せちゃうんだからさ」

「あはは、やっぱりこのスキルは特別だからねぇ・・・」


と言うのも、蠍を倒した時に授与された特別スキル【畏怖領界】が強すぎたのだ。


以前、この詳細を見た時に、とても強力そうな印象があったので、どんなものかと試しにカタツムリに使用してみた所。カタツムリが痙攣し、身体中から粘液を噴き出して紫に変色。途端、粒子に変わってしまった。


あまりに強すぎた為、今は琴音ちゃんのレベルアップを優先する為に封印することにしている。


「余り戦えないと思ってたけど、案外イケるね!この調子で頑張っていこう!」

「うん。サポートは任せてね!」


恵奈たち一行は順調に攻略を進める。


一方その頃。


世界各国に激震が走る出来事が発生する。


ダンジョン攻略の最前線を突き進む(恵奈を省く)各国の最強戦力の一つである特殊部隊。


これが、5階層で出現する強力なモンスターにより壊滅したのだ。

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