第16話

今日から再開です。

よろしくお願いします。

本編です↓




「それでそれで!どこのダンジョン見に行くの!?」


水道水をポットで沸かし、紅茶を入れる。


ダンジョンではこの行動全てを生活魔法で補っていたため、何とも面倒に感じる。しかし、琴音の視線がある今、魔法を使用するわけにはいかない。


沸くまでの間、スマホでダンジョンの位置を調べる。


因みにダンジョンの位置は、意外にも日本政府が公式ホームページで随時発表+紹介していた。ダンジョンの中には凶悪なモンスターが存在しており、いつ出て来て人間を襲うかわからない。


なので、ダンジョンが出現した周辺100mの範囲に住む人たちには避難勧告が出されていた。避難民は余った某ウイルスの隔離施設に臨時に住まうこととなるそうな。


ここは本当に公表できないシークレットな場所だと改めて思う。


「一応、近くにもあるみたいだけど、警察が囲んでるよ」

「・・・むぅ〜残念だけど、遠目か見て見るだけになりそう」


淹れた。ティーカップを持ってテーブルに着くと、一つを琴音に差し出す。


不満げな表情でカップを口にする琴音を見やり、言い出すにちょうど良いタイミングかな、と思った恵奈も一口。


美味しい。やっぱ、エリアヌワラ茶葉こそ至高。


「さて、そんなに残念そうな琴音に、私からのサプライズがあるんだけど欲しい?」

「ダンジョンよりも凄いサプライズだったら欲しい」


現金な奴め。


「うんうん、凄いやつだから期待して良いよ。だけど、約束して欲しいことが一つあるんだけど」

「?」

「絶対に発狂しないこと。これだけは守って」


近所迷惑になるからね、と付け足す。ダンジョンがここにあって実際に攻略できるとなると、絶対にテンション爆上がりになって騒ぐはず。


という理由からなのだが、琴音はドッキリか何かを想像したのか渋い表情だ。


そんな彼女に苦笑いを浮かべつつ、恵奈は押し入れの前に立つ。


「行くよ〜・・・じゃーんっ!」

「え、なにそれ洞窟———洞kッ⁉︎」


琴音は両手で口を塞いだ。


約束を守ってもらえてよかったよ。


「え、恵奈ちゃんこれ、え?だ、ダダンダンジョン⁉︎(小声)」


ダダンダンジョン。なんかリズムが良いね。


「そうだよ、昨日の夜に出来たんだよね」

「何でっ昨日っ教えてくれなかったの⁉︎」


立ち上がった琴音が、私の両肩を揺らす。


「も、勿論誘うつもりだったんだよ。当初は」


実は最初は教えようと思っていた。これは本当の事。だけど、もし一般人が攻略できない難易度の高いダンジョンだった場合、私だけでなく、巻き込んだ琴音諸共殺されてしまったかもしれない。


例え生きて生還したとしても、一生涯消えない重症でも負わせて仕舞えば、親しくしてもらっている琴音の両親に顔向けできない。


こう考えてしまうと、誘う気の削がれるというか何と言うか。


で、いろいろ考慮した紆余曲折あり、結局は危険かどうか私一人で確かめて、大丈夫だったら誘おうと考えたのだ。


本当は、ダンジョン出現の衝撃で、ヒャッホー突撃!をかましたせいだが、言わぬが吉だろう。


この事は墓まで持っていく。


「そんな事、気にしなくても良いのに!」


いや、するが。


それに。


「私の琴音が傷付くの嫌だったし!」

「いつ貴女の物になったのよ、そんな事言っても誤魔化せないからね?大方、私みたいにダンジョンが出来て興奮して突撃でもしたんでしょ⁉︎」

「・・・てへ☆」


ばれてーら。


流石、長年一緒にいる幼馴染である。


私の思考回路なんてお見通しか。


余談。


勝手だが、恵奈は本当に私の琴音だと思って言っていた。


幼稚園児の頃からずっと一緒に生きて来て、こんなにも長い付き合いをしていて運命を感じない方が可笑しい!という暴論である。と言うか、結構好意的に見られていると自覚している。


これは脈アリだ、と常に思っていたりしてる恵奈であった。


因みに、ちょっと早口で否定されたのだが、その早口は恥ずかしがっている時にでる琴音の癖の一つなので、照れている事がわかる。


「まぁ良いよ。恵奈ちゃん、私はこのダンジョンに潜りたい!潜ってステータスを得たい!」

「うん、一緒に行こうか!」


早速突入!


の前に準備。


琴音用に準備していたリュックに各種物資を入れる。これまでダンジョンに潜って来た経験上、必要となるものだけをチョイスしているので、とても軽い。


食糧、衣料品、予備の服だけだからね。


「突入前に、ちょっと注意点ね。このダンジョンはどうも他の場所と毛色が違うみたいなんだよ」

「と言うと?」

「出てくるモンスターがね、何て言うか・・・ファンタジーっぽくないんだよ。どんなのか聞きたい?」


思い出されるは、初めて潜った時の事。ファンタジー全開のダンジョンだと思ったら、あの巨大なカタツムリに発狂してしまった。


お陰で虫に対して、高い精神的な耐性を有することになった出来事である。


「私としては是非聞いておいて欲しいんだけど・・・」

「ネタバレ禁止です!」

「どうなっても知らないからね?」


なぜしつこく聴いたかと言うと、琴音も虫嫌いであるからして。


まぁ死ぬ事はないだろう。私が守るからね。


「はいこれ」


リュックと武器である包丁を手渡す。


「ありがとう、恵奈ちゃんの武器は?」

「私の武器?それはね〜」


手を掲げる。


「これだよ!」


虚空から出現する狙撃銃。


その瞬間をみて、ポカンとした表情を浮かべる琴音がちょっと面白くて、くすりと笑ってしまった。

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