第17話
空中に出現し、自然落下したDSMR-01を受け取り、携える。古式銃カスタムなので、恵奈の着るゴスロリ服とマッチする良いデザインだ。
「・・・え、まさか恵奈ちゃん、課金したの?」
「リアルでどうやって課金するのよw」
予想外の返しに、今度はお腹を抱えて笑ってしまった。
危うくDSMR-01を落とすところだったよ。
まぁ正直、気持ちはわかる。今の恵奈は、課金をすると銃が使えるよ!見たいな、ファンタジーの世界観ぶち壊しゲームの課金プレイヤーである。
本ダンジョン攻略においては、リアルにベクトルの違うチーターだ。
「あれだよその、お金でガチャ回すチートスキルとか持ってるんでしょ?」
「あはは、そんなの持ってない持ってない」
と、どう言う経緯で狙撃銃を得るに至ったかを話す。
ダンジョンで初めてモンスターを殺し、人類初の快挙を成し遂げたおかげで誰かが私に与えた特別報酬である、と。
「なるほどね・・・結局チートじゃないっ‼︎」
本当に何でダンジョンが出来た時に、私を呼んでくれなかったの⁉︎と叫ぶ琴音を宥める。
この荒れ様だと、後で何か埋め合わせしないと根に持つなと感じた。
「お、落ち着いて琴音ちゃん、まだ特別報酬のチャンスは残ってるから、ね?」
「本当っ?」
「本当だよ。まだダンジョンが出来て1日も経ってないの。だから、世界の軍隊とかもそんなに先に進めてない状況なんだよね、だから私が特別報酬を貰えたって訳だけど・・・」
「———他人より先に進めばワンチャンって事ね!」
そう、琴音だけにね。
落ち着いた琴音に、ダンジョンではどう言う行動を取れば良いか、先駆者としてレクチャーする。しかし、その全てがなろうなんかでよく見る設定だったため、理解ある琴音は全て知っていたので、確認だけしたことになる。
ただ、恵奈が感知系スキルなどで知ったモンスターや罠には、我先にと突撃しないことを約束させる。
「じゃぁ出発!」
「うん、待ってなさい特別報酬!」
恵奈を先頭に、一行はダンジョンに足を踏み入れた。
*****
「意外と明るいし涼しいんだね・・・」
包丁片手に、どこか感慨深げに内部を観察する琴音の、初のダンジョンアタックの感想は恵奈と似た様なものだった。
似たもの同士だね、とちょっぴり嬉しくなる恵奈は、笑みを浮かべつつ周囲を警戒する。
「このダンジョンは見ての通り洞窟型。死角からの攻撃には注意してね」
「了解だよ」
勿論、感知できるけど、全て私任せではなく。琴音自身も警戒心は持っていてもらいたい。なんて思いつつ、まだステータスを得ていない一般人の琴音の移動速度に合わせてゆっくり進む。
しばらく道のりに進み、最初の分かれ道。
因みに右方向にはモンスターの反応がある。
「どっち行きたい?」
「こう言うのは相場で決まってるんですよ恵奈君、勿論右!」
おお、正解。
「モンスターの反応があるね、戦闘準備は良い?」
「いつでもOKだよ!」
包丁を構える琴音でが、果たしてカタツムリと近接戦闘できるのか。恵奈の予想だと絶対に出来ないに、98パーセント掛ける。
右に曲がりしばらく進むと。
奴は現れた。
「・・・ね、ねぇ恵奈さん」
「どうしました琴音さん」
「あの、もしかして、アレがモンスターだったり・・・します?」
「👍」
笑顔でサムズアップする恵奈と対照的に、カクカク震えながら顔を青くする琴音。
彼女は幼稚園児の頃、虫が服の中に入って来たことに気づかず、座った拍子にお尻で潰した事でトラウマになった。カタツムリは虫ではないが、虫に近い存在も駄目である。
なのに海老や海鼠は触れるし食べられるってどう言うことなんだろう?と不思議に思う。
海老なんて海に住む虫じゃん。海鼠なんてナメクジじゃん。とは思っていても、琴音の前では口にしてはいけない暗黙の了解が存在する。
「こ、こんな時・・・どうやって倒せば良いかわからないの」
「刺せば良いと思うよ?」
その手に持つ包丁で、と無慈悲に言い放つ恵奈。
「イヤっイヤっ‼︎汚いッキモいっ‼︎」
「因みにだけど・・・」
意味深に一拍。
「私はその包丁で、あのカタツムリを刺殺したよ?」
「———⁉︎」
声にならない悲鳴を上げて、ぶん投げた。
勿論、ちゃんと
度し難い。
さて、投げた包丁だが、放物線を描いてカタツムリに突き刺さった。
彼は事切れて、粒子に変わる。
「なんかデジャブ」
まるで、恵奈の初討伐を見せられているかの様な、見事な再現映像の様だった。やっぱり私たち似た者同士だね!
「あっ‼︎」
琴音がモンスターを討伐した事で、あの声からステータスが付与されたのだろう。虚空に視線を向けて確認している。
その間に、ドロップアイテムである魔石と小瓶を回収する。
カタツムリを倒すと、毎回思うのだけど、この小瓶に入ってる液体は一体何なのだろうか。水にしては粘着質だし、カタツムリの粘液ほどベトっとしていない。
鑑定スキルが有れば良いのに、無いから知れないのがもどかしい。
「どうだった?」
「凄いよ!見て見て私のステータスっ!」
ステータスは自分の意志で他人にも見せられるようで、表示された琴音のステータスを見せてもらう。
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