第10話
「2階層到着〜!」
日本政府がダンジョンについての対応に四苦八苦する中、知らんわ、そんなことよりダンジョンだ!を地で行く恵奈は、とうとう2階層に足を踏み入れた。
やって来た2階層は、相変わらずの洞窟型となっている。
「私の職業と全然あってないですありがとうございます」
もう諦めて進む。
1階層と同じく光苔が生息しているので、【罠感知】や【気配感知】を頼りに注意しつつ歩みを進める。
洞窟に変わりないが、内部通路は流石に変化しているようで、問題なく戻ることができるように、間違いがないよう、ノートに地図を刻む。
「んっ!?」
順調に攻略を進める中、恵奈は2階層内部で離れた場所の気配を感知とった。
モンスターである。
「大体50mくらい先かな?」
かなり先の気配を感知できるスキルの能力に、恵奈は脱帽する。
今までは、曲がったら目の前にモンスターが居た、という状況が普通に発生していたが、気配感知が存在するお陰で、その心配は無くなりそうだと思う。
しかし、慢心はしない。
モンスターが恵奈の【気配感知】よりも高いレベルの【気配遮断】を有している場合、探知精度が低下し、場合によっては探知が出来ない場合もあるらしいからだ。
流石に2階層でそのような敵と当たることはなさそうだが、イレギュラーと言うのは何処でも発生するもの。
警戒するに越したことはない。
「・・・居た」
さて、気配感知で捉えたモンスターだが、1階層と同様、虫タイプのモンスターだった。
跳躍力に貢献する長い足を持つ、生々しい緑色をしたソレ。イナゴ型モンスターである。
現実と違うのはその大きさで、矢張り巨大であった。
巨大カタツムリで見慣れたとはいえ、虫ばかりにはゲンナリしつつ、DSMR-01の銃口を向ける。
そして発砲。
視覚外から不可視の一撃に見舞われたイナゴは、その長い足や腹などを四散爆散させ、辺りに飛び散り粒子に変わる。
誤って踏み潰した時とは比べ物にならない気持ち悪さだ。
しかし弱い。
DSMR-01の強さが階層にあってない。と言うか、ゲームだったら序盤に出て来て良い物ではなく、現実でも正にチート武器すぎた。
「油断しそう」
と、思っていた時。
横にドサッと何かが落ちる音がして、慌ててそちらの方に視線を向ける。
「うわっ・・・何これ?」
今回は距離があったからか、職業特性【戦利品回収】が発動し、ドロップアイテムが恵奈の隣に転送されて来たようだった。
落ちたアイテムは2種類であり、一つはいつもの魔石。
もう一つは。
「え、肉?肉なの!?」
淡白そうな肉だった。
あの、緑い長い足付きの。
「朗報っちゃ朗報だけど、素直に喜べない」
ダンジョン内で食料が得られた。これは喜べることだ。しかし、元となったモンスターと、得た食料の見た目がダメすぎる。
虫虫すぎる。
こんな見た目で食品としては駄目だ。
「そもそも食べられるか分からないんだけどね・・・」
鑑定スキルがない為に、この肉が食用なのか判断がつかない。生物なので、保存しておくことができないので、このアイテムはダンジョンに破棄するしかなさそうだ。
「もしかしたら釣り餌として使えるかも?」
モンスターが食事をするか、定かではない。もしモンスターがこの肉で釣れると言うなら、待ち伏せ攻撃を仕掛けることができる。
一回、試してみるのも良いかもしれない。
「そういえば、あの十字路使えそうだね」
攻略中、左右が行き止まりの十字路が存在した。その中央に肉を設置し、安全が確保しやすい行き止まりの場所で待機。モンスターが来たら引き金を引く。
こうすれば索敵をせずにのんびりと、ことを構えられる。
ことを構えられるが、それだと攻略にロスが発生してしまい、人類初の特別報酬を逃してしまいかねない。
「やっぱりダメね。その作戦は無しで」
待ち伏せなんてしてる場合じゃねぇっ!
「これは廃棄」
恵奈は、肉を通路脇にポイした。
*****
その後も順調に攻略を進め、2階層を突破し、3階層、4階層、そして5階層に大体5時間ほどで到達した。
なぜ、程なのか。
それはダンジョン内部でスマホが動作しなかったから、体感で計測するしかなかった為である。
ダンジョンでは電子機器が使えない。あるあるな設定だね!とは恵奈の余談。
ただ、矢張り使えない事は不便である為、時計型魔道具とか、そんなアイテムがゲットできないものかと、取らぬ狸の皮算用を立てている。
因みに、3階層から登場したモンスターは、芋虫とカエル。
ドロップアイテムは、芋虫は魔石と糸。カエルは魔石と肉だった。
「このダンジョンは意外と食料集めが容易かもしれない」
と言う事も驚いてはいたが、一番は矢張り、恵奈的にカエルが唯一虫ではなかった事の驚きの方が衝撃はあった。てっきり虫オンリーなダンジョンだと思っていた為である。
厳密に言えばカタツムリも昆虫ではない。無脊椎動物である。
さて、それで5階層のことだが、今まで経験して来た洞窟タイプのダンジョンとは一味違う様子。
「あれ?」
階段を降りてすぐのこと。
そこは真っ直ぐ続く
恵奈的に思い浮かぶものは一つしかない。
「ボス部屋キタッ!」
本ダンジョン、初のボス。
ここにあり。
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