第7話
宝箱を覗き込む。
「水晶玉?」
赤い布の上に置かれた水晶玉。
しかし、只の水晶玉ではないようで、内部から光が溢れており、とても神秘的な見た目をしている。
どちらかといえば宝玉だろうか。
このアイテムには、心当たりがあった。
恐らく、ステータス強化系の使い捨てアイテムか、スキルを取得できる宝玉のようなもの。もしくは、異世界あるあるのステータスやら犯罪歴を調べる魔道具か。
数多のファンタジー作品から知識を引っ張ってくると、このような予測が立てられた。
「鑑定スキルみたいなのは無いんだよね〜」
残念ながら、恵奈のスキル一覧には”鑑定”などのアイテムやらなんやらを調べるスキルがない。なので、この宝玉の詳細を知ることができない。
手に取る。
「こう言うのって大体、使いたいって願えば使えるんだよね?」
願ってみる。
予想通りというか、宝玉は粒子に変わり、恵奈の手に吸い込まれるようにして消えた。
そして。
ピコンっ
『スキル【罠感知】を取得しました』
『人類初のスキルオーブ使用が確認されました。特別報酬を付与します』
「来たっ」
—————————————————————————————————
スキル【罠感知】
・周囲に存在する罠を感知するが、精度や感知度合いはレベルに左右される。
—————————————————————————————————
「ダンジョンで使えるやつじゃん、嬉しい」
ミミックだって感知できる優れもの。
もしも攻略中に罠の存在に気づけず、誤って踏み抜いてしまう心配が軽減されるのはありがたいことである。
『特別報酬の付与が完了。特別スキル【ドロップ率強化】を付与しました』
「もしかして増えるの!?」
—————————————————————————————————
特別スキル【ドロップ率強化】
・通常のドロップ率を強化し、アイテムの出現率を強化する。
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「来たーっ!」
ドロップ率を強化するチートスキル君が私の元にやってきてくれました。ありがとうございます、いっぱいドロップお願いします。これからはよろしくお願いいたします!
恵奈はにやにやが止まらない。
「ミミックもう一回出ないかな?」
もしかしたら、ドロップ率強化君が仕事してくれて、もう一度スキルオーブを恵んでくれるかもしれない。
流石に欲張りか。
*****
「これはっ!」
道中レベルを上げつつ、攻略を進める中。
恵奈はとうとう発見した。
地下2階層へと続く階段を。
「あ〜どうしよ?」
進みたい気持ちも当然あるが、レベルも上がっているのでステータスの調整も行いたいし、何より、ドロップアイテムでポケットが膨れている。
このまま動き続けると、戦闘中にこぼしてしまいそうだ。
「一旦帰ろうか」
ドロップアイテムを持ち帰って休憩を取ろうと思う。
ダンジョンが出現してからというのも、アクシデントが発生しつつも恵奈は今までずっと攻略を続けており、その時間は1時間は超えている。
まだ一階層であり、モンスターの出現率は高くないが、移動と戦闘の連続だった。
ファンタジーの出現に興奮しっぱなしで精神的疲労は誤魔化せていても、いずれ限界は来る。
戦闘中に来たら最悪だ。
キリのいいタイミングで切り上げるのが吉と判断し、帰宅した。
*****
帰宅した恵奈は、まず水分補給した後、シャワーを浴びた。
ダンジョン攻略と言う名の運動をしていた為、汗をかいていた。攻略中は気にならなかったが、帰宅するとなった時には気になって仕方がなかった。
「ふぅー・・・さっぱりした」
お腹も空いたので、深夜だけど備蓄してあるカップ麺を食べる。
「2時に食べるの背徳感ある」
深夜のラーメン。
それは何処か悪いことでもしているかの様な感覚。でも美味しい為に啜ることを止められない。気分は犯罪者だ。
ずるずる啜りつつ、恵奈はスマホを開く。
地震と共に発生したダンジョンだが、1時間は経過している為、流石に誰かは気づいているだろう、とSNSでそれとなくサーチする。
無論、ダンジョンと馬鹿正直に検索しない。
既に政府が動いていた場合、私の検索履歴からダンジョンを発見したものだと特定されてしまう可能性があるからだ。なので、新しく投稿されたツイートやバズってるものを中心的に閲覧していく。
「おーおー結構見つかってるみたいだね」
庭に洞窟が出来たというツイート、巨大な塔が出現したというツイート。洞窟の中で
中でも緑色の肌の醜い顔をした小人タイプのUMAには、反応がすごいことになっている。
イメージ画像だけど、どうみてもゴブリンだった。
対する恵奈の反応はと言うと。
「ちゃんとファンタジーしてて良いなぁ・・・」
であった。
思い出すのは初めてのダンジョンアタック。包丁片手に接敵したモンスターは、まさかの巨大カタツムリ。
そして恵奈が使う武器も剣や槍でもなく、現代武器の代表格たる銃である。
ファンタジー要素の無さに泣けてくる。
「ステータスの存在も露見してるじゃん」
モンスターを殺すと『モンスターの討伐を確認。討伐者にステータスを付与します』と言う声と共にステータスを閲覧できる様になった、というツイートも目に入る。
投稿者は名前と性別、年齢を伏せて内容を公開している。
「・・・数値低くない?」
体力が10。魔力に至っては2、スキルポイントは2しかない。おまけに職業は未定となっている。
恵奈の初期ステータスと比べるのも烏滸がましい程の差があった。
「やっぱり、人類初って言うのが関係してるのかな?」
真相はわからないし、恐らくこれから先も判明しなさそうだ。
「ご馳走様ですっと」
片付けた後は、ステータス調整を茶々っと済ませて、もう一度ダンジョンに潜る。
日本だけにとどまらず、世界の人々がダンジョンという存在に気づき始めた今、おめおめしていると人類初という特別報酬を逃してしまいかねない。
乗るしかないよね、ビックウェーブに!
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