第6話
「いた」
ダンジョンに入ってすぐの事。モンスターである巨大カタツムリを捕捉したので、DSMR-01のセーフティを解除し構える。
既に装填済みな為、引き金を引けばいつでも発砲可能だ。
弾道予測線と交差するタイミングを見計らう。
———重なった。
「耳が痛くなりませんように!」
ちょっぴり躊躇いつつ引き金を引いた。
バシュッ‼︎
ビチャっ
静かに銃口を飛び出した12.7mm弾は、恵奈の予測通りに弾道線を描いてほぼ直進にカタツムリに激突。通常弾はカタツムリをまるで豆腐を潰すかのように爆散させた。
オーバーキルである。
辺りにカタツムリの肉片やら臓腑が飛び散るが、粒子となって綺麗に消滅し、代わりにドロップアイテムの魔石を置いていく。
「本当に小さい音になってる!」
説明文の通りに音が小さくなっており、恵奈の耳にはダメージがない。最高の仕事をしてくれたサプレッサー様様だ。
しかし、
「いっつぅ〜反動が強くなってない?」
サプレッサーを装着する際、反動抑制に一役買っていた標準装備のマズルブレーキを取り外した影響である。
恵奈的には音よりマシだと思っているので、この反動には慣れるしかないと考えていた。
「さて、この調子でガンガン進むよ!」
バシュッ‼︎
ビチャっ
バシュッ‼︎
ビチャっ
バシュッ‼︎
ビチャっ
そして5体目のカタツムリが粒子に変わると同時に、あの音が響いた。
ピコンっ
『レベルアップしました』
『人類初のレベルアップが確認されました。特別報酬が授与されます』
「お!」
またしても人類初という美味しいイベントを達成していた事に驚く。まだ世界はダンジョンを認識していないのだろうか。
しかし、これはチャンスだ。まだ誰も達成していないことを率先してやっていけば、このような特別報酬にありつけるかもしれない。
やる価値はあるだろう。
さて、前回は上位職だった。今回は如何に?
『特別スキル【成長促進】を付与しました』
「チートっぽい匂いがするね・・・」
周囲を警戒しつつ、ステータスを開いて素早く内容を確認する。
体力50→70
魔力100→200
スキルポイント0→4
体力はほんのちょっとの上昇に対して、魔力は2倍の伸び代である。スキルポイントも4に2倍されている。これが特別スキルの効果なのだろう。
—————————————————————————————————
特別スキル【成長促進】
・レベルアップによるステータス上昇量及び獲得スキルポイント量を2倍にする。
—————————————————————————————————
「良くあるチートだ!」
普通にレベルを10に上げれば、得られるステータス量もそれなり。スキルポイントに至っては20固定。
しかし、この特別スキルがあれば上記の数値は2倍に膨れ上がる。
レベル帯が全く同じ人間同士でも、スキルの数とレベルの差で戦力が極端に開く。やりようによっては高レベルの者を屠る事すら出来る可能性を秘めている。これは相当にエグいチートスキルだ。
「まぁ有り難く利用させていただきますよ」
使わない手はないしね。
と、ステータスの確認もそこそこにダンジョンの攻略を再開した。
*****
「ん?」
もはや見慣れた存在に成り下がったカタツムリを殺しつつ、ダンジョンを彷徨っていると、小さなフロアにたどり着く。そのフロアは大体10m四方の正方形をしており、その中心部には。
怪しさ満点の宝箱が鎮座していた。
「これまた下手だね」
絶対罠だと恵奈は確信した。
恐らく宝箱に触れるとナイフや矢が飛んできたり、部屋を閉められてモンスターハウスになったり、宝箱自体がミミックのようなモンスターの可能性だってある。
ここはスルーを決めるのが吉・・・なのだが。
もし普通に宝箱で中にレアなアイテムがあったらかと思うと、ミスするのは名残惜しく、絶対後であの時開けておけば良かったと後悔する。
そう言う人間であると、自身の性格を理解している恵奈である。
「安全を確認しつつ、これで攻撃だ!」
手にしたのはDSMR-01———ではなく。
カタツムリから出てきたドロップアイテムの一つ。
魔石だ。
これを振りかぶって、投げた。運動神経はそこまでな恵奈だが、ステータスを得たお陰かコントロールが上手くなっており、コツンっと音を立てて宝箱に命中した。
その瞬間。
———ゴガァアアアアアッ‼︎
勢いよく開いた宝箱の中からフ○フルのような本体っぽい触手が飛び出し、鋭い牙を持つ大きく口を開き、何もない空間を噛み切る。
予想の一つ、ミミックであった。
予想外なのはカタツムリ同様、気色悪い見た目をしてることだが。
ガチンッと凡そ歯から出る音とは思えない金属音。食べられたらひとたまりもなく、恵奈だったら一撃で即死していただろう。
「うわぁ〜近づかなくて良かった」
バシュッ‼︎
グチャッ!!
———ルァアアアッ!?
安堵しつつ、済ませていた照準の元、発砲。
長く伸びきっていた触手と宝箱の間に命中。12.7mm弾の威力は高く、触手と宝箱を文字通り真っ二つに引き千切る風穴を開けた。
地に落ち、痙攣した後に粒子となるミミック本体と宝箱。
「え、宝箱も消えちゃうの!?」
なんて焦ったのも束の間。
元々あった場所に再度、宝箱が出現した。これがミミックを討伐した際のドロップアイテムなのだろう。
落ち着いた恵奈は、もしこれが二重トラップ的にまたミミックだった場合を警戒し、魔石を投げつけるが反応はない。でも心配な為、蓋をDSMR-01の銃身で器用に持ち上げた。
どうやら罠の類はないらしい。
恵奈は宝箱を覗き込んだ。
中身は一体、なんなのだろうか。
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