第3話 シスター①
「おい、起きろ!!」
サグは横たわった少女に呼び掛ける。
制服を着ていた。女子高生なのだろう。
サグは転生の女神ではない。奪い神だ。なのになぜ転生が出来るのか。
サグは異世界から、死んだ魂を奪うのだ。
「サグちゃん、奪われて来た僕が言うのもなんだけど、なるべく異世界転生に寛容な人なんだろうな。ゲームとか、漫画とかしっかり読んでそうな人な。」
「もちろんだぞ。今回は主人公になれそうな奴を狙ったんだぞ!!」
サグはある程度は狙いを定めて魂を世界から奪うのだろうか。なら僕が引き当てられたのはなんなのだろう。
「ここ、どこ?」
当然だが混乱している。
「今、アニメとかで流行りの異世界転生だぞ。悪役令嬢にしてやるぞ!!」
「え!?そんなことできるの?盗賊か奴隷だけじゃないの?」
「いや、女なら悪役令嬢に出来るぞ。私の隠れ信者が多いんだぞ。」
「盗賊と奴隷の神様がなんで貴族なんかに信仰されてんだよ。」
「私は奪い神。略奪を司る神だぞ。」
サグは転生者である女に言ったが、ついつい僕は口を出してしまった。
「貴族が略奪とは現世は世知辛い世の中みたいだね。やってることは盗賊と変わらないのか?」
どこの世も争いがあるのだろう。貴族社会の闇を見た気がした。
「いや、貴族の女学院の子たちが彼氏を奪うのに信仰してるぞ。」
「学校の怪談レベル!?」
「ちなみにマッチング率100%だぞ!!」
サグはドヤ顔を僕に向けるから、変顔で返してやる。
「継続率低いだろ。そのマッチング。」
「そうなのだ。結局別れてしまうんだぞ。しかも私の信者の方から別れを告げることが多いんだぞ。」
心を奪っても、付き合ってみたら意外と好みじゃなかったってことか??
青春過ぎて黒歴史だろうに……
「ちょっと待て、サグちゃんは悪役令嬢に転生させてこの子に何させないんだ?」
「貴族社会に私を堂々と信仰するものが出てきてみろ。信者拡大、お供え物いっぱいだぞ。」
純粋な少女の目なのにサグの心の中は薄汚れていた。
おそらくだが、悪役令嬢ものをサグは知らないのだろう。ただの令嬢でよさそうだ。
「ただ、貴族の女はダメだぞ。ひっそり私を信仰するからほとんど布教にならないんだぞ。」
本気の悩みなのかはわからなかったが、邪心崇拝なんて貴族令嬢からすれば黒歴史だろうから布教なんかするわけないだろう。
「結婚するような年齢になったら、関係を隠すために証拠全部を燃やすんじゃないか?」
「そんなことしたら、ダメだぞ。私の宗派は重複信仰は許すが、燃やすとか捨てるとかしたらダメなんだぞ。もしそんなことしたら、大事なものを奪うことにしているんだぞ。」
「関わったらダメなタイプの妖怪とかと手口が一緒じゃん。」
僕はサグの現世での評価が低い理由がわかった気がした。
「あの……」
女子高生は僕たちに声をかける。
ずっと放置していたので若干申し訳ない。
「すまない。私は奪い神サグ。お前は死んだんだぞ。アニメとか漫画で流行りの異世界転生だぞ。」
「ごめんなさい、私……アニメとか漫画わかんない……です。私、さっきまで生徒会室でいたのに……」
女子高生は申し訳無さそうにこっちに目を向けた。
サグちゃんを殴りたくなった。
「間違えたぞ。」ボソッと声を漏らした。
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