第2話 転生したのに
僕は異世界転生者だ。
名前はジャク。邪神のせいで前世の名前を奪われた可哀想な転生者だ。
職業は盗賊。
邪神サグから「俺つえー」を約束されたサグ宗教の信者である。
それだというのになんでだ。
「おお、ジャク。しんでしまうとはなにごとだ!」
目の前にはサグがいた。
「ん?」
「ん?」
お互いに目を合わせる。
「ちょっと待て!!」
「どうしたんだ?ジャク?」
死んだ?いや、現世すら見てないはず……
いつ?転生してたの?死因はなんだ?
頭の中に疑問はアホみたいに出てくるが、僕には転生した現世の記憶がなかった。
現世での記憶は持ってこれないのか?
サグは目を反らしながら声を出す。
「すまないな。ジャク。功績もなく死んでしまった貴様の魂はさっき話したように川の泥となる。最後に言い残すことはないか?」
さっき?どういうことだ?まさか……
「サグちゃん、僕の死因はなんだ?」
「大トカゲに頭を食われたんだぞ。」
サグは近くの書類に目を通すこともなく、即答した。
「そっかー。僕はどのくらい現世に滞在したんだ?」
「5秒くらいだと思うぞ。」
5秒?
いやいや、なんで?どういうこと?
俺つえーはどうした!?
秒殺じゃないか!?
「貴様が転生したのが、トカゲの口の中だったんだ。転生した所が悪かったんだぞ。」
「ふざけるな!!そんなの無効だ!!」
サグはため息をついた。
「ジャクよ。すまない。私は奪い神。奪うことは出来ても転生先を決めることは苦手なんだぞ。運が悪かったな。ドンマイ!!(笑)」
ドンマイじゃねぇええ!!!!(怒)
トカゲの口の中に転生ってなに?
ハードモード過ぎなんだけど!?
世界感把握前に死んでんじゃん!!!
「サグちゃん、もう一度チャンスをくれ。」
「嫌だぞ。」
「川の泥ってこの世界の地獄ってことだろ?」
「違うぞ。地獄は別にあるぞ。魂の処分方法がわからないから川に捨てるんだぞ。」
まさかの不法投棄!!
「言っておくが、環境汚染になるから本当はやっちゃダメなんだぞ。だいたいの異世界の奴は現世で功績積むからお迎えがくるんからこんなことにならないんだぞ。」
悪気があるなら、交渉の余地がありそうだ。
「なら、やめよう。神の世界の環境汚染なんてダメだって。他の神様に迷惑かかっちゃうよ。」
「でもジャク。お前居ても役に立たないだろ?」
「役に立てば、居ていいんだな。」
「いいぞ。なんなら、功績によっては2度目の転生も考えてやるぞ。」
交渉は成立した。
だが、サグの役に立つって何をすればいいんだ?
「神様の役に立つことなんて思い付かないんだが……」
相手の懐に入り込むには相手が何を望むかが重要だが……
「私は奪い神だぞ。前世を思い出せ!!奪ってきたはずだ!!宝を!!恋人を!!勝利を!!それから導くんだ。ジャクに何ができるかを!!!……」
「そんなもん、奪ってねよ!!!バーカ!!!!
帰宅部だったの!!引きこもりなの!!
勝者じゃないの、圧倒的敗者なの!!」
当然だが、窃盗の類いには縁がない。ただの引きこもりた。
「お前失礼な奴だな。引きこもりなんて、勝者だぞ。親から貯金と愛と期待をすべて奪った成れの果てだぞ。」
すみませんでした!!
もう川の泥でいいです。一緒にやっていけません。
クソガキに虫けらのようになぶられるなら死んだ方がましです。
よくよく考えてもこのバカ神が転生させる才能がないから……
僕は糸口を見つけた。サグの苦手なこと。それは恐らくはキャラメイク。
キャラメイクなら僕でも出来るはずだ。少なくともサグよりも上手く。
「サグ。僕にキャラメイクを手伝わせてくれ。」
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